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SKハイニックス、40兆ウォンの自社株消却…史上最大の還元

SKハイニックスが国内上場史上最大規模の自社株消却カードを切った。SKハイニックスは19日、取締役会を開き、普通株2,407万株を市場で買い付けて消却する案を議決したと公示した。 取得予定金額は総額40兆ウォンだ。取締役会決議前日の終値166万2,000ウォンを基準にすると、発行株式の約3.3%に相当する。買い付けは20日から約3カ月間行われ、取得が終われば全量を消却する。 ◆ピザの切り分けを減らせば、一切れは大きくなる 自社株消却とは、会社が自社の株式を自分のお金で買い入れて消してしまう措置だ。原理はピザにたとえられる。会社価値というピザの大きさはそのままだが、切り分ける数、すなわち株式数が減る。残る株主が持つ一切れの価値は、その分だけ大きくなる。 配当とは性格の異なる還元方法でもある。配当は現金を分配する代わりに税金がかかるが、消却は1株当たりの価値を直接押し上げる。買い入れるだけで消却しなければ、後に再び市場に出回る可能性があるが、全量消却を明確にすればその余地はなくなる。 SKハイニックスは決定理由について、「事業競争力と現金創出力、中長期成長性など、同社の本質価値が現在の株価に十分反映されていないと判断したため」と説明した。会社自身が、今の株価は実力より安いと見ているわけだ。 ◆金庫に69兆ウォン、約束は『50%以上』へ 資金の源は半導体の空前の好況だ。SKハイニックスはAIによるメモリー需要を追い風に、四半期ごとに過去最高業績を更新しており、今年第2四半期末の純現金は約69兆ウォンに達する。純現金は保有現金から負債を差し引いた値で、会社の実際の余剰資金を意味する。 株主還元の約束も引き上げられた。SKハイニックスは2024年11月、2025~2027年の累積フリーキャッシュフロー(FCF)の50%の範囲内で株主還元を行うと発表したが、基準を『50%以上』に変更した。FCFは、稼いだ現金から設備投資などの支出を差し引いて残る、会社が自由に使える現金を指す。上限だった50%が下限に変わった形だ。 還元の方法も広がる。自社株取得・消却と現金配当を並行し、固定配当と特別配当を含む配当拡大策も検討する。SKハイニックス関係者は「政策期間内のキャッシュフローと市場状況、配当可能利益などを考慮し、自社株の取得・消却と配当を並行する形で追加的な株主還元を進める予定だ」と述べた。そのうえで、「具体的な規模と方法は取締役会の決議を経て、第3四半期の業績発表時に案内する計画だ」と付け加えた。 余力はさらに残っているとの見方も出ている。証券業界では、SKハイニックスの今年末の純現金は200兆ウォン水準に達し、株主還元余力は100兆ウォン規模まで確保されうると推定している。40兆ウォンで終わりではないかもしれないという計算だ。 ◆発表が遅れた事情、残る確認ポイント 発表時期には事情がある。自社株消却案は先月末の第2四半期業績発表時には公表されなかった。先月10日の米国預託証券(ADR)上場後、25日間の投資説明書交付期間が続いていたためとされる。 米国市場の規定では、新しい証券を発行した直後は株価に影響しうる発表を控える期間があり、業績発表日がその期間と重なった。SKハイニックスは交付期間が終わった今月初めに取締役会を招集し、政策を確定した。 市場では、ひとつの基準点が示されたとの評価が出ている。国内上場企業の株主還元が40兆ウォン単位にまで上がった例が初めて出たことで、現金を積み上げた他の大企業の還元政策にも目線が移る可能性があるからだ。韓国株式市場が実力より低く評価されているという、いわゆるコリアディスカウント論議でも参考事例になるとの分析が続く。 投資家が注意すべき点もある。消却効果は株価上昇を保証しない。買い付けは3カ月にわたって分割実施されるうえ、還元原資であるFCF自体が半導体景気に左右されるため、好況が鈍れば還元余力も減る構造だ。第3四半期の業績発表で公表される追加還元の規模と方法が、次の確認ポイントとなる。

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サムスン電子、光州に2400億ウォン投資…AIデータセンター冷却装置を生産

サムスン電子は19日、光州市・フレックトグループコリアと、光州事業場内に空調機器生産ラインを新たに構築する投資協約を締結したと明らかにした。 今回の投資は、6月29日の「大韓民国大躍進 3大メガプロジェクト 国民報告会」で発表した総額2655兆ウォンの国内投資計画に続く措置だ。サムスンは報告会の翌日、湖南一帯に425兆ウォンを投資する詳細計画を示し、光州事業場にデジタルツイン基盤の革新ハブ工場とヒートポンプ・空調機生産施設を建設すると予告していた。 ◆ 37年ぶりの大規模生産投資 生産ラインは光州北区の光州事業場第3キャンパスに入る。規模はサッカー場3面分に当たる2万1800㎡だ。1989年に光州事業場が開設されて以来、37年ぶりとなる大規模生産施設投資である。 このラインでは2028年初めから、フレックトグループの主力製品である冷却水分配装置(CDU)を生産する。データセンター向け空冷用ファンウォールユニットやコンピュータールーム用空気処理装置、大型建築物向け空気調和機も合わせて製造する予定だ。 6月の発表には、光州事業場にデジタルツイン基盤の革新ハブ工場を建てる内容も含まれていた。デジタルツインは、実際の工場をコンピューター内にそのまま再現し、事前に試験稼働してみる技術だ。今回の協約で、ヒートポンプ・空調機生産計画のうち空調分野が先に具体化した形となった。 ◆ AIサーバーを水で冷やす理由 フレックトグループの主要HVAC製品イメージ(左上から時計回りに)AHU、FWU、CDU、CRAH AIデータセンターは、高性能サーバー数万台が休みなく稼働する施設だ。サーバーが放出する熱が非常に大きいため、従来のエアコン方式の冷房だけでは対応が難しい。このため、サーバーに冷却水を直接流して熱を冷ます「液体冷却」方式が急速に広がっている。 CDUは、この液体冷却システムで冷却水の流れを管理する装置だ。建物の冷房設備であるチラーとサーバーに取り付けるコールドプレートの間で、冷却水の圧力と温度を調整し、不純物を取り除く。液体冷却性能を左右する中核装置とされる。 サムスン電子は昨年、15億ユーロ(約2兆4000億ウォン)を投じてドイツの空調企業フレックトグループを買収した。今回の光州投資で、フレックト技術を国内生産拠点に接ぎ木し、AIデータセンター冷却市場攻略を加速させる方針だ。 ◆ 家電を超え、データセンターインフラへ サムスン電子 光州事業場第3キャンパス全景 空調は、家電事業部が新たに育成する事業だ。中国企業との競争が激化し、家電の成長が鈍化するなか、サムスンは空調市場に活路を見いだしている。世界各国でAIデータセンターの建設が続き、それに伴って冷却設備需要も増えている。 データセンターは、消費電力のかなりの部分をサーバーの発熱を冷やすために使うため、冷却効率が運営コストを左右する。今回の投資で空調生産基盤を国内に広げ、2030年までにグローバル先導企業へ飛躍するという目標を掲げた。 サムスン電子DA事業部長のキム・チョルギ副社長は、「今回の光州生産ライン構築は、差別化された空調事業競争力を確保する重要な基盤になるだろう」と述べた。 AI投資ブームは、半導体を超えて電力・冷却設備などの基盤産業へと広がっている。今回の投資は、洗濯機やエアコンを作ってきた家電生産拠点が、データセンターインフラ拠点へと領域を広げる事例だとの評価が出ている。

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米国、アップルの中国製メモリ購入に歯止め…サムスンへの影響は

米ハワード・ラトニック商務長官は、中国製メモリ半導体を購入することに反対する意向を、アップルに直接伝えたと、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が14日(現地時間)に報じた。 ラトニック長官は「メモリ問題には別の解決策が必要だ」「偉大な米国企業が中国製メモリを使うのは望ましくない」と述べた。反対の意思をアップルに伝えたのかという質問には、「明確に伝えた」と答えた。 発端は、世界的なメモリ不足だ。メモリ半導体は、機器がデータを保存して取り出すための記憶用チップである。AIサーバー企業がメモリを大量に吸い上げたことで、スマートフォンやノートPC向けの供給が不足し、価格が急騰した。 アップルもその影響を免れなかった。6月には、メモリ価格の急騰を理由にMacやiPadなど主要製品の価格を引き上げた。 供給元を広げようとする動きは中国へ向かった。WSJによると、アップルは数カ月にわたり、中国の長鑫存儲技術(CXMT)と揚子江存儲科技(YMTC)のチップ導入承認を得ようとしてきた。 中国販売向けのiPhoneやMacBookに搭載するため、CXMTのチップを試験したとも伝えられた。英フィナンシャル・タイムズは、アップルがこの夏、米商務省に中国製メモリ調達の問題を打診したと報じている。 アップル側にも理屈はある。サビ・カーン最高執行責任者(COO)はWSJに対し、iPhoneの部品の多くは受注生産だが、「メモリはカスタマイズが多くない」と語った。標準規格品であるため、どの会社の製品でも使えるという意味で、中国製導入のハードルは低いという説明と受け取られる。 法的には、アップルの手足が縛られているわけではない。YMTCは米商務省の輸出規制リスト(エンティティ・リスト)に載っているが、CXMTは含まれていない。 両社とも米国防総省が中国軍関連企業として指定したリストには入っているが、この指定は警戒シグナルにすぎず、民間取引を禁止するものではない。標準品のチップは政府の承認なしに購入でき、受注生産型のみ許可が必要となる場合がある。 そのため、ラトニック長官の発言は法律ではなく圧力として解釈される。関税を主要な武器とする政権の不興を買う選択は、アップルにとって負担だとの見方が続く。 議会も期限を区切った。チャック・シューマー上院議員ら米上院の超党派議員7人は、アップルに対し、21日までに世界で販売する製品にCXMTとYMTCのメモリを使わないと約束するよう求める書簡を送った。 下院では、CXMTを輸出規制リストに追加するよう商務省に求める動きも出た。米メモリ企業マイクロンや、半導体投資の誘致地域に属する議員らも、中国製調達を阻止するようロビー活動を行っていると、外信は伝えている。 問題はアップルだけではない。WSJによれば、HPとエイサーは米国外販売製品にCXMTのメモリをすでに使い始めている。ラトニック長官はまた、アップルの米国内生産拡大についても「容赦なく、もっと」と圧力を強めていると述べた。 当面は、追い風を受けるとの分析が出ている。世界のメモリ市場は、サムスン電子とSKハイニックス、マイクロンの3強構図だ。 アップルのような大口需要家が中国製を外せば、発注が既存の3社に戻る可能性が高いという計算だ。そもそも品薄で売り切れる状況だけに、交渉力は供給側により傾く。 ただし、長期的には警戒材料もある。CXMTは中国政府の支援を受けて生産を急速に拡大しており、HPやエイサーの事例のように、米国外市場ではすでに販路を広げている。 米国の圧力が、中国国内市場でかえって中国製採用を加速させる可能性もあるとの見方がある。韓国企業としては、追い風を享受する一方で、技術格差をさらに広げておくことが課題とされる。 消費者の負担は別問題として残る。中国製という迂回供給路が塞がれれば、品薄と価格上昇の圧力は続き、機器価格の引き上げという形で転嫁されかねない。 上院が区切った21日の回答期限にアップルがどのような姿勢を示すのか、CXMTの輸出規制リスト入りが現実化するのかが次の分岐点となる。二つの判断次第で、世界のメモリ供給地図と韓国企業の計算は再び描き直される見通しだ。

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社会

環境

グーグルのAIで「飛行機雲」を消す…航空温暖化の3分の1を削減する実験

Global Team

グーグルと英国政府が、飛行機が空に残す白い筋「飛行機雲」を減らす実験「オペレーション・ブルー・スカイズ」を進める。北大西洋のシャーンウィック空域で30カ月間にわたって実施される。 飛行機雲は、地球から逃げ出す熱を閉じ込め、大気を温める。航空産業全体の気候への影響のうち、約3分の1を占めると推定されている。 グーグルのAIが飛行機雲が発生しやすい空域を予測すると、管制官が航空便の高度を最大2000フィート(約610メートル)調整する。年間1万便のうち、経路を変更するのは1〜5%にとどまる。 実験予算は500万ポンド(約94億円)で、英国政府が半分以上を負担する。グーグルは140万ポンド(約26億円)を無償で支援し、衛星画像で効果を測定する。 新しい燃料やエンジン開発なしに、空の航路を調整するだけで温暖化を抑える低コストの気候対策になり得るとして、世界の航空業界が結果を注視している。 飛行機が空に残す白い筋「飛行機雲」を人工知能(AI)で避ける実験が始まる。 米ITメディアのエンガジェットは19日(現地時間)、グーグルと英国政府が飛行機雲の発生を減らす共同実験「オペレーション・ブルー・スカイズ」に乗り出すと報じた。実験の舞台は北大西洋北東部のシャーンウィック空域だ。欧州と北米を行き来する航空機が通過する要所である。実験は30カ月続き、実際の経路調整は今後2度の冬にわたって行われる。 ◆ 飛行機雲とは何か? 飛行機雲は、ジェットエンジンが吐き出す排気ガスの周囲で水蒸気が凍りついて生じる。冷たく湿った空気を通るとできやすい。晴れた日の空に長く引かれる白い線こそが飛行機雲だ。 見た目は無害だが、気候には負担となる。飛行機雲が薄い雲のように空を覆うと、地球が宇宙へ放出すべき熱が閉じ込められる。 夜に布団をかけると暖かさが逃げないのと同じ原理だ。研究者らは、飛行機雲が航空産業全体の気候影響の約3分の1を占めると推定している。二酸化炭素の排出に劣らない要因でありながら、目に入りにくいため対策が遅れていた。 飛行機雲は科学的に測定されてきた現象だ。航空機が密かに化学物質を撒いていると主張する「ケムトレイル」陰謀論とは無関係である。 ◆ 航路を600メートル変えるだけで違う 実験では、グーグルのAI予測モデルが飛行機雲が発生しやすい大気の区域を事前に特定する。その後、英国の航空管制機関NATSの管制官が、その区域を通る航空便の高度を最大2000フィート上下させる。航空便は通常の運航範囲を外れない。乗客が経路変更に気づきにくい程度だ。 調整対象は少数に限られる。実験期間中、シャーンウィック空域を通過する航空便は年間約1万便だが、経路を変える飛行機は1〜5%にとどまる。先行する小規模実験では、AI予測が温暖化を引き起こす飛行機雲が生じる区域を見つけ出せることが確認されている。 グーグルは予測モデルを提供し、衛星画像と機械学習で飛行機雲が実際に減ったかを測定する。参加の対価は受け取らず、140万ポンド(約26億円)を拠出する。AP通信によると、総予算500万ポンド(約94億円)のうち半分以上は英国政府が負担する。英国気象庁やインペリアル・カレッジ・ロンドン、ケンブリッジ大学、非営利組織コントレイルズも協力する。 ◆ 低コストの気候対策となるか 航空分野の炭素削減は、費用も時間もかかる課題だ。持続可能航空燃料(SAF)はまだ高価で、新型エンジンの開発には数十年かかる。 飛行機雲回避は、既存の航空機をそのまま使い、航路だけを調整すればよい。実験が成功すれば、航空業界が直ちに使える最も安価な気候対策になるとの期待がある。 迂回すれば燃料消費が増え、二酸化炭素排出が増えるという指摘もある。予測が外れれば無駄になる可能性もある。今回の実験は、効果と副作用を比較衡量する実際のデータを初めて大規模に確保する場となる。 結果次第では、飛行機雲回避が世界の管制標準として広がる可能性もある。長距離国際線の比重が大きい韓国の航空業界にも、他人事ではない。空に引かれた白い線一本が、航空の気候対策の順序を変えるのか。2度の冬が過ぎれば答えが出る。

ESG/CSR

生活

(17日)週末に200ミリの豪雨襲来…今すぐすべき大雨対策

Global Team

中部地方では17日から3日間にわたり最大200ミリ以上の豪雨が予想されており、消防当局が非常対応体制に切り替えている。重要なのは、雨が降り出す前の残り時間だ。装備の事前配置と市民の先行対策が被害規模を左右すると指摘されている。 消防庁は16日午後、統合指揮調整統制センターで崔容哲・消防庁長職務代行主宰の集中豪雨対応状況点検会議を開き、全国の消防対応態勢を点検したと明らかにした。 気象の見通しによると、16日から17日にかけては光州・全北・全南などの全羅圏で30~80ミリ、沿岸部などの多い所では100ミリ以上の雨が降る。18日にはソウル・仁川・京畿など首都圏と江原で50~100ミリ、多い所では200ミリ以上が予想される。大田・世宗・忠南でも多い所は200ミリを超え、忠北でも最大150ミリ以上が見込まれる。 消防庁は17日午後4時から状況対策班を稼働させる。気象状況と地域別被害をリアルタイムで把握し、必要に応じて消防力を即時投入する体制だ。ソウル・仁川・京畿・江原など被害懸念地域の消防本部も同時刻から状況対策班を運営する。 蔚山119化学救助センターで運用する大容量放水システムを、17日午後6時までに忠北・忠州の忠清・江原119特殊救助隊へ移す。この装備は本来、大型油槽火災への対応のために導入されたが、大規模浸水地域の水を迅速に排出する排水作業にも使われる。 忠州は、豪雨が予想される首都圏、江原、忠清のすべてを射程に収める要衝だ。災害対応では装備が現場に到着する時間が被害規模に直結する。事故発生後に蔚山から出動するのではなく、被害懸念地域の近くで待機させることでゴールデンタイムを前倒しする狙いとみられる。 崔職務代行は「短時間に大量の雨が集中すれば、河川の氾濫や道路・住宅の浸水、土砂災害などで人的被害が発生する危険が高まる」と述べた。さらに「可用な消防力と装備を危険地域に先制配置し、国民の生命と安全を守るうえで隙がないようにする」と強調した。 行政安全部の国民行動要領によると、少しでも浸水した地下車道や道路は絶対に通ってはならない。見た目には浅く見えても、水の勢いと深さは判断できないためだ。小川沿いや河川敷、海岸は急流に巻き込まれる危険があり、近づくこと自体を避けるべきだ。山や渓谷の登山客は、斜面や谷から直ちに離れなければならない。田んぼの畦や水口の様子を見に行くのも禁物だ。 地下空間は時間との勝負だ。半地下住宅や地下商店の床に少しでも水が入り始めたり、下水が逆流したりしたら、直ちに避難しなければならない。外の水深が膝の高さ、約50センチを超えると、水圧のため一人ではドアを開けられなくなる。この場合は電源を切ったうえで、複数人で力を合わせて扉を開けて脱出しなければならない。階段からの浸水が足首の高さでも、子どもや高齢者には上るのが難しいため、流入が始まった時点で避難するのが原則だ。 一人で動くのが難しい近隣住民にも目を配る必要がある。行動要領では、移動が困難な高齢者や障害者など避難弱者がいれば、周囲に助けを求め、共に避難するよう案内している。半地下居住世帯が多い地域ほど、住民同士が互いに確認し合う連絡網が実質的な安全装置になるとの評価が出ている。 車両にも判断基準がある。水がタイヤの3分の2以上まで浸かる前に、安全な場所へ移動させなければならない。移動が難しい場合は、エンジンが止まる前に窓やサンルーフをあらかじめ開け、脱出経路を確保しておく必要がある。地下駐車場へ車を取りに入る行為そのものが命懸けとなる。 専門家が強調する解決策は、雨が降り始める前の準備にある。今できることだ。 まず家の周囲を点検すべきだ。排水溝や側溝が落ち葉やごみで詰まっていると、雨水はたちまち逆流する。事前に詰まりを取り除くだけでも浸水リスクは大きく減る。浸水が予想される半地下住宅や建物の地下駐車場の入口には、水止め板や土のうを設置しておくのが望ましい。河川敷や低地に止めてある車は、あらかじめ高い場所へ移すべきだ。 マンションや建物の管理主体の役割も大きい。地下駐車場の入口に水止め板や土のうを設置し、雨水が流れ込み始めたら車を出そうとする進入自体を遮断しなければならない。避難が必要な状況では、入居者を建物内の高い場所や近隣の避難施設へ案内する役目まで管理事務所が担う。 情報の受信経路も確保しておく必要がある。スマートフォンに行政安全部の安全ディディムドルアプリを入れておけば、気象特報や土砂災害・洪水の予警報をリアルタイムで受け取れる。国民災難安全ポータルや自治体のサイトで自宅周辺の避難場所を事前に確認し、家族が離れたときに再集合する場所を決めておくことも必要だ。避難経路は河川敷、山道、電柱や変圧器の周辺を避けて設定しなければならない。 屋内の安全対策もある。浸水や停電が懸念される場合は、ガスをあらかじめ閉めて二次事故を防ぎ、停電時にはろうそくの代わりに携帯用ランタンを使う。浸水した道路を歩かなければならない場合は、街灯や信号機、立て看板など屋外の電気設備から2~3メートル以上離れて感電を避けるべきだ。 雨が上がった後も油断は禁物だ。浸水した住宅は、電気とガスの安全点検を終えてから使用しなければならない。水が引いた道路も地盤が弱くなっている可能性があるため、損壊箇所への接近は控えるべきだ。 孤立したときは、無理な移動の方が危険だ。建物内にいるなら高層階へ移動して救助を待ち、119番に通報する際は、位置、人数、水が満ちていく速さを具体的に伝えなければならない。正確な通報が消防力配置の判断を早める。