世界の人工知能(AI)の覇権争いが激化する中、イーロン・マスクが率いるxAIが再び注目を集めています。
マスクは次世代AIモデル「グロック(Grok)5」を今年中に公開する予定で、このモデルが「真の汎用人工知能(AGI)への最初の飛躍」となる可能性があると主張しました。AGIは人間と同等またはそれ以上の知能を持つAIを意味し、現在オープンAI、グーグル、アンソロピック(Anthropic)などの先導企業もまだ達成していない段階です。

マスクの発言は、最近X(旧Twitter)であるユーザーがオープンAIのGPT-5とグロック4を比較したことから始まりました。一部のユーザーはGPT-5が前作GPT-4.5より応答性が低下したと指摘し、公開されたベンチマーク結果でもグロック4が様々な課題でGPT-5を上回るとの評価がありました。マスクは即座に反応し「グロック5は真のAGIの可能性を持つモデルになる」と強調しました。
昨年発売直後のグロック4は、迅速な反応速度、高度化されたマルチモーダル対応(テキスト・画像・動画など複合入力処理)、Xプレミアムサービスとのシームレスな連携で肯定的評価を得ました。特に数学と物理問題の解決で優れた性能を示し、「通常の試験問題は間違いなく解決する」とマスクの自評も出ました。
曖昧に提示された問題から誤りを発見し、正解を見つける機能も差別化された利点とされました。グーグルのスンダー・ピチャイCEOがXに「発売おめでとう。印象的な進展」と公に述べるほど、業界の関心を引きました。
マスクはグロック5を「圧倒的に優れた(crushingly good)モデル」と表現し年内の発売を公式化しました。具体的な性能や機能は未公開ですが、既存のグロック4が示した改善点を基に、さらに強力な性能が追加されると期待されています。
AI業界は今回のモデルがオープンAIのチャットGPT、グーグルのジェミニ(Gemini)、アンソロピックのクロード(Claude)と競争する主要モデルになる可能性に注目しています。
現在xAIはグロックをXプレミアム加入者に提供しており、iOSおよびAndroid独立アプリとしても発売しました。グロック5がAGIレベルに近づけば、単なる対話型モデルを超え、産業全般に波及力をもたらす可能性が提起されています。
マスクは長年にわたりAGI開発に強い意欲を示してきました。しかし、グーグル・ディープマインドのCEOデミス・ハサビスが「AGIはまだ数年はかかる」と述べるなど、業界多数は慎重な立場を維持しています。
ディープラーニングの父と呼ばれる英国の計算機科学者ジェフリー・ヒントンも「AIが人類を害さないためには、母親のように育成する必要がある」と言及しました。それだけAGI開発には技術的成就だけでなく、安全と倫理の問題も伴います。
今回マスクが示したグロック5ビジョンは、業界の慎重論とは異なり速度と性能を前面に押し出した主張です。実際にグロック5がAGIレベルに到達するかはまだ検証されていませんが、マスクの発言だけでもAI業界内の競争構図と期待心理を大きく刺激しています。
マスクのxAIは今年に入って攻撃的な歩みを続けています。先にグロック4が期待以上の成果を見せたと評価され、次世代モデルへの期待値が一層高まりました。オープンAIがGPT-5を準備し、グーグルがジェミニを高度化し、アンソロピックがクロードを改善する中、xAIのグロック5が実際にどのような性能を示すかが今後のAI覇権競争の重要な分岐点になる可能性があります。
業界はグロック5の発売が単なる新モデルの発表を超え、AGI開発を巡る技術的可能性と社会的議論を同時に引き起こすと見ています。AGIが実際に実現されれば教育、科学、産業全般に革新をもたらす可能性があるが、同時に倫理的・社会的論争も避けられません。
現時点ではマスクが強調した「AGIへの真の飛躍」が単なるレトリックにとどまるのか、実際の技術的転換点になるのか見守る必要があります。しかしグロック5の公開が迫った今、AI業界と投資家、そして全世界の利用者の視線はマスクとxAIの次の動きに集中しています。