ワイン一杯が口に触れるまでには、その中に多くの手間と時間、技術が込められています。単にブドウを発酵させて作る飲み物ではなく、農業と科学、芸術が結合した産物です。ワインは栽培から熟成まで続く一連の過程を経て完成されます。ブドウが瓶の中のワインになるまでの流れを追ってみましょう。
良いワインは良いブドウから始まります。ブドウの品種だけでなく、日照量、降水量、土壌の排水性とミネラル含有量までがワインの品質を左右します。収穫時期は糖度、酸度、タンニンのバランスが取れた瞬間を基準にします。ブドウが過熟になると糖度が上がりますが酸味が落ち、未熟だと風味が不足します。収穫は、主に夜明けや早朝に行われます。熱による発酵を防ぐためです。

収穫されたブドウは即座にワイナリーに移送されます。ブドウ房から粒を取り外す「茎除去」作業が機械で行われます。その後、品質が低い、または傷ついたブドウは選別過程で取り除かれます。ワインの品質はこの時点で既に半分以上決まると考えられます。
茎と傷ついたブドウを取り除いた後は「圧搾」が行われます。ブドウ粒を優しく押して皮を破り、発酵に必要なジュースを出す過程です。その後、圧搾と発酵が続き、この時点から赤ワインと白ワインの道が分かれます。

白ワインは圧搾後すぐに皮や種を取り除いた澄んだ葡萄汁だけを発酵させます。この過程で透明で繊細な香りを生かせます。発酵は通常12度から22度の低温で行われます。
一方、赤ワインは皮や種と共に発酵します。この過程を通じて、皮から色素とタンニンが抜け出し、特有の渋味と構造感が形成されます。発酵温度は20度から32度の比較的高い温度で行われます。発酵中に浮かび上がるブドウの皮を下に押し込む「パンチングダウン」またはワインを上に引き上げる「ポンピングオーバー」作業を繰り返します。味と色を十分に抽出するための工程です。

発酵を終えたワインは熟成段階に移ります。熟成はオーク樽またはステンレスタンクで行われます。オーク樽はワインにバニラや香辛料、スモーキーな風味を加えます。フレンチオーク、アメリカンオークなど、木の種類により香も異なります。一方、ステンレス熟成はブドウの本来の香を保つのに適しており、新鮮で綺麗なスタイルのワインに主に使用されます。
熟成期間はワインの種類とスタイルにより異なります。短くて数カ月、長ければ数年に及ぶこともあります。生産者はこの期間中に何度かテイスティングを行い、瓶詰めの時期を決定します。
最後の工程は瓶詰めです。ろ過過程を経て不純物を丁寧に取り除き、瓶に詰められます。一部の高級ワインは瓶内で追加の熟成工程を経て出荷されることもあります。消費者が手にするワイン一本には、このように数十の選択と技術、そして時間が込められています。
ワインは単なる発酵飲料ではありません。根から瓶栓まで続くこの流れを理解すれば、一杯の重みが以前とは違って感じられるでしょう。