韓国・ソウル市が推進する少子化対策「出産応援ソウルプロジェクト」が、市民の育児環境に対する認識や出産意向の変化に肯定的な効果をもたらしていることが分かった。ソウル市は16日、2023年に実施された個別事業の成果を評価した「育児幸福都市政策成果評価」の結果を発表した。
今回の評価は、2022年8月に開始された同プロジェクトの2年目を迎えた中間点検として実施されたもので、ソウル研究院、政策諮問団、各分野の専門家27名が評価体系を設計。市民1,610人を対象とした「育児者調査」、受益者2,540人へのアンケート、各種行政統計を総合的に分析した。その結果、全19の成果指標のうち16項目で優秀との判定を受けた。主要事業の効果については、専門家の評価とCEM(Coarsened Exact Matching)手法による需要者の回答を交差分析し、効果を導き出した。
育児環境の親和性スコアは5点満点中3.56点で、事業実施前の2022年の3.30点から上昇。特に注目されるのは、それまで市民全体よりも低かった育児者の評価が2023年には逆転し、育児者の方が高く評価していた点だ。これは実際の育児環境が改善されていることを示唆している。
また、出産意向に関する指標も改善が見られた。子どものいない夫婦のうち「出産意向あり」と答えた割合は2023年の56.5%から2024年には68.5%に上昇。子どもがいる夫婦の場合は27.3%から30.3%へと微増した。政策を経験したか否かによる差も顕著で、無子夫婦では非経験者の65.7%に対し、経験者は90.9%が「出産意向あり」と回答。子持ち夫婦では16.2%に対し、経験者は36.9%と、政策が出産の決断に実質的な影響を与えていることがうかがえる。
特に高い成果を挙げた主な事業には、「ソウル型ベビーシッター費用支援」「24時間緊急保育」「ママ・パパタクシー」「保育園の夕食支援」「家事サービス支援」の5つがあり、いずれも専門家評価で3点以上を獲得し、CEM分析でも有意な効果が確認された。

また、分野別の専門家からの提言も盛り込まれた。安全な保育分野では「ソウル型」特化事業の拡充が必要とされ、外出支援分野では、キッズカフェやママ・パパタクシーなどの直接的な支援事業は継続しつつ、施設整備に関しては法制度の整備が必要だとされた。仕事と育児の両立支援については、キャリア断絶の予防を優先課題とし、特に小規模事業者への支援や男性の育児参加促進といった自治体の役割が強調された。
ソウル市は今後、政策評価の分析手法を高度化し、自営業者やフリーランス世帯の育児実態についても調査を行う方針だ。政策効果の信頼性と適用範囲を拡大していくとしている。
ソウル市女性家族室のキム・ソンスン室長は「プロジェクト実施後、育児環境に対する認識や出産意向がともに改善された点は大きな意味がある。今回の成果をもとに、シーズン2の準備を万全に進めたい」と述べた。