AIによって写し出される現代の姿像-台北ダンダイにて技術と芸術の境界が崩れ去る

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By Global Team

AIの倫理・情報操作・気候危機をテーマにした3つのデジタルインスタレーション作品が公開される。

台湾最大の国際アートフェアである台北ダンダイ(Taipei Dangdai)は今年も台湾文化部と手を組み、「プラグを抜く(Pulling the Plug)」展を共同で主催する。5月8日から10日(現地時間)まで開催される今回の展覧会では、AI技術とデジタルツールが人間社会に投げかける倫理的、心理的、環境的衝撃をテーマに、3点の大型インスタレーション作品を紹介する。

今回の展覧会では、技術の権力化、監視社会、アイデンティティの解体、データバイアスなど現在の人工知能が引き起こしている重要な問題を視覚的に解き明かす。単なるデジタルアートを紹介するのではなく、東アジア美術界がAIとどのように対話しているのかを示す企画である。

台北ダンダイ2025のイメージ提供: ocula.
台北ダンダイ2025のイメージ提供: ocula.

展覧会の代表作は、パリを拠点とするニューメディアアーティスト、シュ・レア・チャン(Shu Lea Cheang)の「UTTERING」(2023)である。作家はこれを「AIの自画像」と称する。作品内の人物は絶えず肌の色、髪の色、性別、目の形が変わり、固定されたアイデンティティを拒否する。口にかぶせられた猿ぐつわは沈黙を象徴し、口から飛び出すキーボードキーはアルゴリズムが人間の表現をどのように誤解させるかを示唆する。AIが決定する倫理基準、そしてその制御権限が誰にあるのかを問う視覚的な宣言文である。

スー・ホイユウ, 「宇宙戦士とデジタル墓地」, 2023–2024, ビデオインスタレーション, AI生成画像, 短編映画。画像提供: 作家。
スー・ホイユウ, 「宇宙戦士とデジタル墓地」, 2023–2024, ビデオインスタレーション, AI生成画像, 短編映画。画像提供: 作家。

第二の作品は、スー・ホイユウ(Su Hui-Yu)がデジタルコレクティブXTRUXと共同製作した「Space Warriors and the Digigrave」である。この作品は、オープンソースAIツールと伝統的な映画技法を組み合わせ、軍事的プロパガンダがデジタルメディアにどのように巧妙に侵入するかを明らかにする。個人の記憶と台湾の過去のSF映画文化が入り混じり、今日のメディア環境が虚偽情報と感情操作にどれほど脆弱であるかを喚起する。

張徐展, 「シロアリ給餌ショー」, 2024, シングルチャンネルのカラーサウンドビデオ2本, 16:9映像–14分44秒, 円形映像–5分19秒。画像提供: 作家及びプロジェクトフルフィルアートスペース。
張徐展, 「シロアリ給餌ショー」, 2024, シングルチャンネルのカラーサウンドビデオ2本, 16:9映像–14分44秒, 円形映像–5分19秒。画像提供: 作家及びプロジェクトフルフィルアートスペース。

最後に、張徐展(Zhang Xu Zhan)は、生態変化後に電線を食べるシロアリの群集をアニメーションで表現した。張は伝統紙工芸の職人の家系として、気候危機を扱いながらも民俗性とデジタル技法を融合する独特な視点を提示する。

今回の展覧会は単に芸術界内で消費される技術論ではなく、AIをめぐるグローバルな社会的論争を東アジア的視点で再構成した成果物である。韓国も生成型AIの拡散の中で倫理、制御、アイデンティティの問題に直面している。今回の展覧会は、芸術がその問題にどのように応答できるかを示している。

台北ダンダイ2025。画像提供: Taipei Dangdai 2025。
台北ダンダイ2025。画像提供: Taipei Dangdai 2025。

一方、台北ダンダイは展示規模を縮小した代わりに完成度を高めた。参加するギャラリーは昨年の78から51に減少したが、アルミン・レク(Almine Rech)、カールステン・グレベ(Karsten Greve)といった世界的なギャラリーが初参加し注目を集める。既存のギャラリア・コンティヌア(Galleria Continua)、ギャラリーエイゲンアート(Galerie EIGEN + ART)も再び参加する。台湾を代表するギャラリー、ティナケン、イチ・モダン、アジアアートセンターも名を連ねた。

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