カリフォルニア北部地方法院にOtter.aiを相手取った連邦集団訴訟が16日(現地時間)に提起されました。
訴訟を提起したカリフォルニア州サンジャシント(San Jacinto)在住のジャスティン・ブルーアーは、自分が知らないうちにOtter.aiが個人的な仮想会議を違法に録音したと述べ、プライバシーの侵害を主張しています。
ブルーアーは、Otter.aiのAI転写サービスである「Otter Notebook」がZoom、Google Meet、Microsoft Teamsなどの様々なプラットフォームで参加者の明示的な同意なしに会話を密かに録音していると主張しました。彼はOtter.aiのアカウントすら持っていなかったが、会議の内容が自分も知らないうちに録音・転写されたという事実を後で知り、法的対処を行いました。
原告側は、Otter.aiの録音方法がカリフォルニア州法と連邦法のプライバシー保護法および盗聴法のすべてに違反していると主張しました。特にOtterソフトウェアがユーザーの職場カレンダーと連動する場合、仮想会議に自動で参加して録音を開始しながらも、参加者にそれを知らせない点を問題視しました。

Otter.aiは、自社のプライバシーポリシーにおいて「AIトレーニング目的での会議記録使用には明示的同意を得る」と明記していると述べました。しかし、訴状によれば、これは会議主催者に限定され、実際の発言者の多くは、自分たちの声が録音され共有されていることを全く知らなかったとしています。
録音された内容はAI音声認識および機械学習システムの高度化に使用されており、これを通じて会社は商業的利益を追求していると原告側は主張しました。特にOtterの「非識別化(de-identification)」プロセスが不透明で、実際に敏感情報の削除や発話者の匿名化が十分に行われていないという批判も提起されました。
今回の訴訟は、ブルーアー以外にも類似の被害を受けたカリフォルニア住民を代表して提起されました。Otter.aiは2016年の設立以降、これまでに全世界で10億件以上の会議を処理し、ユーザー数は2,500万人を超えると知られています。
これに関連する実際のケースも問題を大きくしています。あるAI研究者は、投資家と行ったZoom会議後、Otter.aiが個人的な後日談まで含まれた転写本をメールで送信したことを確認しました。該当する転写内容は投資家間での敏感な議論まで含まれており、その後に予定されていたビジネス交渉が頓挫しそうになった事件につながりました。
ソーシャルネットワークサービス(SNS)やRedditなどのコミュニティでも同様の経験を共有するユーザーが増えています。特に人権活動家や反体制派との敏感な会話がOtterを通じて無断で転写された可能性に対して懸念が集中しています。Politicoの記者は、ウイグル人権活動家とのインタビューがOtterによって記録されているかもしれないと懸念を表明しました。
Otter側は「外国政府や法執行機関とユーザーデータを共有しない」と釈明しています。しかし、事前同意なしに会議への自動参加と録音が可能な現行システムについては、依然として論争が続いています。
今回の訴訟は、原告側とOtter.aiの単なる法的紛争を超え、AI基盤の自動転写技術が普及する時代において、プライバシー保護およびユーザー同意の原則の重要性を喚起する契機となり得ます。訴訟の結果により、AI技術の活用に関する新しい基準が形成される可能性も提起されています。