韓国電力は、サムスン電子とSKハイニックスに対し、今後5年分の電気料金を前払いしてもらう案を協議している。3日、朝鮮日報の単独報道によると、韓国電力は大規模電力需要企業に電気料金の前払い制度を提案した。前払い規模は25兆ウォン前後と見込まれる。
算出根拠は昨年の納付額だ。サムスン電子は昨年、電気料金として4兆1000億ウォン、SKハイニックスは9000億ウォンを支払った。両社の合算で年間5兆ウォンを基準に、来年から5年間に支払う料金を計算した金額である。
◆借りる代わりに先にもらう
韓国電力の顧客は現在でも、預り金の名目で電気料金を前払いし、利息を受け取ることができる。韓国電力は、個人や企業が少額で利用してきたこの制度を、大規模な資金調達手段として活用するため、特例を新設する案を検討している。
背景には財務事情がある。韓国電力は今年上半期に営業利益4兆9000億ウォンを計上したが、総負債は211兆ウォンに達する。上半期の利息費用だけで2兆1000億ウォン、1日当たり115億ウォンに相当する。社債をさらに発行して負債を増やす代わりに、確定した将来収益を前倒しで使おうという構想だ。
資金が投入される先は電力網だ。発電所で作った電気を工場まで送るには、送電線と変電所を新たに整備しなければならない。AIデータセンターや先端産業の基盤施設など、韓国電力が推進する大型事業は、いずれも大規模な電力網建設が前提となる。半導体工場は特に電力消費が大きいため、電力網の整備が遅れれば工場の稼働そのものが遅れる。
◆企業には利息、韓国電力には現金…残る争点
企業側から見れば、まとまった資金を5年間拘束される代わりに利息を受け取る取引となる。市場金利より高い利率が提示されなければ参加インセンティブは生まれにくい。両社とも今年上半期に大幅な利益を上げているだけに資金余力はあるが、投資計画と照らして条件を精査せざるを得ない。
韓国電力の財務構造が根本的に改善するわけでもない。預り金は会計上、負債に分類される。25兆ウォンを前払いで受け取っても帳簿上の借金は変わらず、当面の電力網工事に使える現金が確保される効果にとどまる。料金値上げなしで資金を確保する迂回路である一方、5年後にはその分だけ当該企業からの料金収入が消える構造でもある。
対象企業が2社に集中する点も論争の種だ。電力使用量の多い他企業へ拡大するのか、前払い企業に対して電力網の優先接続などの便益があるのかによって、公平性の問題が提起され得る。
韓国電力は協議が進行中との立場だ。参加の可否をはじめ、利率や前払い規模、期間など具体的事項はまだ確定していないと明らかにした。協議の結果は、半導体クラスターへの電力供給日程と韓国電力の財務対策の方向性を占う試金石になる見通しだ。