主な内容
▶ トヨタは2028年から、グループ傘下の60工場にロボット40万台を段階的に導入する。
▶ 本社工場に15万台、グループ会社と協力会社に25万台を配備する。年間1兆円(約9兆4,000億ウォン)を投じ、生産担当役員直属のロボット専門組織を設ける。
▶ 主力ロボット「ELEY(エレイ)」は重さ約50キロで、二足歩行ではなく車輪で移動する。作業員がロボットの手を模した装置を装着し、部品を運ぶ動作を見せると、ロボットがその動きを学習する。

トヨタが工場向けロボット事業を投資家に向けて打ち出した。フィナンシャル・タイムズ(FT)は26日(現地時間)、トヨタの経営陣が、20年近く研究してきたロボットを事業化するため、世界の投資家に説明を始めたと報じた。工場自動化を大きく転換する計画の一環で、中国との競争や自動車以外への事業拡大を見据えている。
トヨタは9月18日、2028年からグループ傘下の60工場に自社開発ロボット40万台を段階的に導入すると発表した。本社工場に15万台、グループ会社と協力会社に25万台を配備する。
投資額は年間1兆円(約9兆4,000億ウォン)で、ヒューマノイドや既存設備の更新を含めたグループ全体の推計額だ。生産を統括する最高生産責任者の直属にロボット専門組織を設け、まず自動車工場の人手不足の解消に取り組んだうえで、外部への販売を検討する。
◆歩かないヒューマノイド

トヨタが工場に導入する主力ロボットは「ELEY(エレイ)」だ。重さは約50キロで、二足歩行ではなく車輪で移動し、バッテリーと電源のどちらでも稼働する。
2本指のグリッパーで箱から部品を取り出して運んだり、布をたたんだりする。関節は日本人成人男性の平均的な体格に合わせて設計され、人とぶつかった際に関節が力を受け止められるよう、減速比を低くしたアクチュエーターを採用した。先代モデル「HSR」にはなかった肩甲骨の軸を加え、腕の可動範囲を広げた。
学習方法が鍵となる。作業員がエレイの手を模した装置を装着し、部品を運ぶ動作を見せると、ロボットはその動きを学習する。9月中旬、ベルギーにあるトヨタ欧州本部では、2週間で1,500回練習した後、Tシャツをたたむことに成功した。
トヨタは、ロボットが学んだデータを本社に集め、新たなロボットに反映させる。トヨタには「匠」と呼ばれる熟練職人が約1万8,000人いるが、その多くが定年を間近に控えている。ロボットに受け継がせようとしているのは、彼らの手仕事の技術だ。中島裕樹副社長は、ロボット導入の目標は「代替ではなく共存」だと語った。
◆頭脳はカリフォルニア、身体はボストンとケンブリッジ
ロボットAIは、カリフォルニアのトヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)が開発した「大規模行動モデル(LBM)」だ。言語モデルが文章から学ぶように、人の実演映像から動作を学ぶモデルで、大まかな判断をリアルタイムの関節制御に変換する。同じモデルは、現代自動車グループ傘下のボストン・ダイナミクスが開発したヒューマノイド「アトラス」にも搭載される。両社は2024年10月に共同研究を開始した。
TRIで大規模行動モデルを率いていたラス・テドレイク氏は今年1月、マサチューセッツ州ケンブリッジにウォルデン・ロボティクスを設立した。同社は7月16日、トヨタとデビエーション・キャピタルが主導する3億ドルの資金調達を実施し、企業価値は11億ドルと評価された。エヌビディア、ボーイング、サムスンベンチャーズ、コアウィーブ・ベンチャーズも出資した。
ウォルデンのロボットは、上半身が人間型で、下半身は車輪式だ。人のそばで停止する際、車輪のほうが動きを予測しやすく、安全基準を満たしやすいという理由からだ。北米のトヨタ工場で試験稼働を始めてから2カ月後の2月には、実際の生産に投入された。
トヨタは他社製のロボットも活用している。2月にはカナダ工場への導入に向け、アジリティー・ロボティクスの二足歩行ロボット「Digit」と契約を結んだ。4月には東京で、自社開発のバスケットボールロボット「CUE7」がドリブルやシュートを披露した。
◆韓国では労使合意が先決
ヒューマノイドの工場導入をめぐる競争は、自動車メーカー同士の争いとなっている。テスラは自社工場で「オプティマス」を試験運用し、年間100万台の生産と、2万~3万ドルの価格を目標に掲げた。
BMWはフィギュアのロボット、メルセデス・ベンツはアプトロニックのロボットを試験している。現代自動車グループは1月のCESでアトラスを公開し、2028年までに米国にロボット工場を建設して、生産現場に段階的に導入する方針を示した。
韓国では労働組合の壁がある。現代自動車の労組は1月、「労使合意なしに、ロボットを1台たりとも現場に導入することはできない」と表明した。年収1億ウォンの労働者で24時間ラインを稼働させれば年間3億ウォンかかる一方、ロボットなら初期費用と維持費だけで済むという試算も、労組側が先に示した。
トヨタが選んだのは、作業員がロボットの教師になる仕組みだ。ロボットが学ぶ動作を現場の作業員が自ら実演し、そのデータは会社の資産となる。ロボットに誰が教え、そのデータを誰が所有するのかという問題が、ロボット導入の是非とともに新たな論点として浮上している。