AIが法律市場を大きく変える——カナダClioが vLexを10億ドルで買収

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By Global Team

カナダの法律ソフトウェア企業クリオ(Clio)が、グローバルな法律データの巨頭vLexを10億ドル(約1兆4,000億ウォン)で買収します。これは、法律技術(Legal Tech)業界の歴史上、最大規模のM&Aの一つです。特に今回の買収は、クリオが企業価値30億ドルを認められ、史上最大の9億ドル規模のシリーズF投資を終えた直後に行われたという点で業界の注目を集めています。

クリオは、法律事務所向けのクラウドベースの運営ソフトウェアでよく知られています。顧客管理、請求書の送信、時間記録、電子決済など、法律事務所の日常業務をデジタル化するソリューションを提供しており、現在世界90カ国以上で15万人の法律専門家が利用中です。

2008年の設立以来、約13億ドルに達する累積投資を誘致したクリオは、今回の取引でAI基盤の法律プラットフォームへの転換を本格化します。

クリオが買収したvLexは、200カ国以上の法律文書や判例、法令などを保有する膨大なデータプラットフォーム企業です。特に、自社開発した『Vincent AI』は生成型AI(GPT-4)とvLex独自の法律データベースを融合した高度な法律分析ツールとして注目されています。

vLexの 'Vincent AI'が文書比較と法律検討を支援する。
vLexの ‘Vincent AI’が文書比較と法律検討を支援する。

Vincent AIは単なる法律検索ツールを超えて、訴訟文書の分析、契約書のレビュー、証言整理など実際の法律実務に投入可能な機能を提供します。テキストだけでなく音声・動画ファイルもリアルタイムで分析・要約できるマルチモーダルな機能も備えています。利用者は結果に含まれるすべての文書の出所を直接確認でき、法律的信頼性と透明性も持っています。

この技術は2024年、米国法律図書館協会が選定した「今年の新製品」としても名を連ね、米国内の大手法律事務所多数が既に導入しています。

今回の買収を通じてクリオは、単なる法律事務所運営ソフトウェアを超えて、実際の法律実務まで包括するフルスタックプラットフォームへと飛躍します。ジャック・ニュートン・クリオCEOは「AIはこれまで分離していた『法律ビジネス』と『法律実務』の境界を破壊している」とし、「vLexの技術力とデータ資産がClioのサービスに加わることで新しいカテゴリーを創出する」と述べました。

クリオは既存の『Clio Duo』製品群とVincent AIをどのように統合するか検討中です。利用者は別途プログラムを区別することなく、すべての法律業務をAI支援の下で遂行できる「一元化されたユーザーエクスペリエンス」を享受できる見通しです。

これにより、中小型法律事務所や個人法律事務所も別途システム構築を行わずに、高価なAIリサーチ機能をクラウドで簡単に活用できるようになりそうです。法律産業の「デジタル変革」を加速する大きな節目となり得るという分析も出ています。

vLexはこれまでプライベートエクイティのオークリーキャピタルが買収し、グローバル拡張を推進してきましたが、米国AI法律スタートアップのハービー(Harvey)も昨年買収を試みたことがあります。ハービーは最近、リファレンスデータの確保を目的として世界第2位の法律データ企業レクシスネクシス(LexisNexis)と提携しました。

このようにAI基盤の法律市場を巡る競争は既にグローバルな技術・データプラットフォーム間で激化しています。専門家たちは、今後法律分野の競争優位は技術よりも「データ」にかかっていると指摘しています。クリオCEOのジャック・ニュートンも「長期的に持続可能な競争力は結局データから生まれる」と強調しました。

この買収でクリオは法務実務自動化、契約文書作成、AIリサーチなど多様なワークフローを一つに結ぶ「統合法律プラットフォーム」の基盤を築くことになります。中長期的にはAIが法律事務所の組織構造や収益モデルまで変える「第2のデジタルトランスフォーメーション」が本格化するという展望が説得力を得ています。

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