AGI(人工汎用知能)は、AI研究の最終目標とされている。特定の業務のみを行う従来のAIとは異なり、人間のように自ら考えて問題を解決できる知能システムを意味する。人間の学習能力、創造力、判断力などを複合的に実現しようとする試みであり、技術進歩が到達すべき「知能の終着点」と評価されている。
現在使われているAIの大半は「狭い人工知能(ANI)」に分類される。例えば、翻訳機、画像生成、自動運転、音声認識などは、それぞれの目的に合わせて学習された特化型モデルだ。AGIはこれらの限界を超え、与えられた問題の文脈を理解し、全く新しい問題にも自ら適応するレベルを目指している。人間の言葉を理解し、感情や意図を解釈し、経験を通じて知識を拡張する能力が鍵だ。
AGIの概念は1950年代のAI研究の初期から存在していた。アラン・チューリングは「機械が考えることができるか」という質問を投げかけ、その可能性を提起した。その後、数十年間にわたりAI研究は規則に基づく方法、機械学習、ディープラーニングなど様々な方法論で進化したが、人間レベルの思考能力には到達していない。最近では、大規模言語モデル(LLM)と強化学習技術が結合し、AGIの実現可能性は以前より現実的になっている。
AGIは単なる技術革新を超え、社会構造全体に影響を及ぼす可能性を持っている。労働市場、教育、医療、法律、政治など、人間中心の意思決定体制が根本的に変わる可能性がある。人間が行っていた複雑な判断と創造的な問題解決をAIが代替できるからだ。そのためAGIの開発は倫理と安全の問題を伴う。人間の価値観をどう反映させるか、制御不可能なAIのリスクをどう予防するかが重要な論点となっている。

アメリカ、ヨーロッパ、中国など主要国は、AGIの開発競争に積極的に取り組んでいる。OpenAIは2023年からAGIレベルのAI開発を公式目標として宣言し、Google DeepMindは強化学習を基盤に人間の戦略的思考を模倣するアルゴリズムを開発中だ。中国も大規模な計算インフラを活用した超巨大モデルを国家の戦略として推進している。
しかし、AGIの実現には依然として多くの技術的・哲学的課題が残っている。AIが人間の意識や感情を理解できるのか、創造性は単純なデータの組合せで可能なのか、倫理的判断基準を学習できるのかなどの問題がある。専門家たちはAGI到達までに少なくとも数十年かかると予想しながらも、現在の発展速度次第では予想より早く初期形態が出現する可能性もあると見ている。
AGIに関する議論は、人間の知能を技術で再現できるかに関する根本的な疑問を投げかける。ただ単により速いコンピューターを作るのではなく、人間のように考え、感じ、決定できる存在を創造しようとする試みである。技術発展が加速するにつれ、「知能とは何か」という哲学的探求はますます重要になっている。