
サムスン電子とクアルコムの2ナノメートル(nm)ファウンドリーをめぐる交渉は、年をまたぐ兆しを見せている。
半導体業界によると、両社はクアルコムの次世代アプリケーションプロセッサ(AP)をサムスン電子の2nmプロセスで委託生産する契約について協議を続けているが、価格などの詳細条件で意見の隔たりを埋められていない。
APはスマートフォンの演算や通信を担う頭脳となるチップで、ファウンドリーは他社が設計した半導体を受託生産する事業だ。
交渉が表面化したのは、今年1月のCES 2026だった。クアルコムのクリスティアーノ・アモン最高経営責任者(CEO)は当時、サムスン電子と2nmをめぐる交渉を進めており、商用化に向けた設計作業も終えたと明らかにした。
4月にアモンCEOが韓国を訪れ、サムスン電子のファウンドリー事業部長、ハン・ジンマン氏と会談すると、業界では契約が間近との見方が広がった。それからさらに5カ月が過ぎた。
◆ 技術面はクリア、価格で行き詰まり
業界関係者の説明を総合すると、障害となっているのは技術ではない。これまでクアルコムの受注獲得に何度も失敗した理由は、サムスンのプロセスが求められる性能や歩留まりを満たせなかったことにあった。
現在協議中の2nmプロセスはかなり安定しており、クアルコムも前向きに評価していると伝えられている。同じプロセスを採用したサムスン独自のAP「Exynos 2600」も、性能面でおおむね良好な評価を受けた。
クアルコムは生産単価の引き下げを求めている一方、サムスン電子は応じていない。半導体業界の関係者は「交渉はかなり長く続いているが、結局、価格などの条件が折り合っていないと理解している。サムスンのファウンドリーは最近、受注が好調で、HBM4のベースダイの生産も多い。無理な要求を受け入れてまで契約する状況ではない」と話した。交渉対象となる生産量自体が大きくないことも、サムスンが価格を引き下げない理由に挙げられる。
◆ 空いている工場を埋めていた時代ではない
ファウンドリーは工場を建設して稼働させる事業であり、固定費が大きい。注文がないときは、価格を下げてでも受注し、工場を稼働させるほうが損失を抑えられる。サムスンのファウンドリーは長い間、そうした状況に置かれていた。
しかし、今年に入って状況は変わった。サムスン電子はテスラと165億ドル規模の受託生産契約を結んだのに続き、ブロードコムなど大手テクノロジー企業からAI・高性能コンピューティング向けの受注を相次いで獲得した。
4月には、複数の大手テクノロジー企業と2nmの受注について協議中で、追加契約を期待していると明らかにした。価格も引き上げた。7月には4nmの新規注文価格を引き上げ、5nmと8nmも値上げしたと伝えられている。一部の先端プロセスでは、値上げ幅が10~15%に達した。
メモリー事業からもファウンドリーへの発注が相次いでいる。サムスン電子は今年2月、業界で初めてHBM4の量産と出荷を開始し、エヌビディアの次世代プラットフォーム「Vera Rubin」向けの供給に入った。
HBMはDRAMを複数層に積み重ねたメモリーで、最下層に置かれるベースダイはファウンドリーのプロセスで製造される。
台湾のDigiTimesは、サムスンが4nmの生産能力の半分以上をHBM4のベースダイに割り当てたと報じ、4nmの増産を検討しているとの報道も出た。別の業界関係者は「HBM4の生産量を確保するだけでも4nmは手いっぱいだ。ファウンドリーの収益性が改善しているため、稼働率を上げる目的で安価な注文まで受ける必要性は薄れている」と話した。
生産能力が限られる状況では、収益性の高い顧客や製品が優先される。クアルコム1社を確保するために、以前のように大幅な値引きをする理由は小さくなった。
◆ 年内の生産は難しく
時間はクアルコムに味方していない。APはスマートフォンの発売スケジュールに合わせて量産する必要がある。韓国紙「ザ・ベル」は9日、契約の遅れによりサムスンがクアルコムのAPを年内に生産するのは難しいとみられ、次世代製品をめぐって改めて協議しようという話も出ていると報じた。
クアルコムは2021年以降、主要APの生産をTSMCに移してきた。TSMCはAI半導体の注文も集中し、最先端プロセスの価格を積極的に引き上げているため、クアルコムにとってサムスンは必要な代替先となっている。
クアルコムは22日、ハワイ州マウイ島で年次イベント「Snapdragon Summit」を開催したが、その場でもサムスンとの契約発表はなかった。サムスン電子、クアルコムの双方とも交渉について公式見解を示していない。
サムスン電子はファウンドリー事業の正常化に向け、役割分担も行った。ハン・ジンマン事業部長が顧客の信頼回復と受注拡大を、ナム・ソクウ最高技術責任者(CTO)がプロセス技術の競争力強化を担う。