バークシャー・ハサウェイ、第1四半期の現金586兆円で過去最高…アベル新CEO初の成績表公開

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By Global Team

待つ。買い進めない。4月の1カ月間もそうだったし、1四半期の3カ月間ずっとそうだった。ウォーレン・バフェットの後を継いだグレッグ・アベル新最高経営責任者(CEO)が最初の四半期成績表で市場に投げかけたメッセージは、これほどまでに断固としていた。過去最高規模の現金を積み上げたまま、様子を見る姿勢だ。

バークシャー・ハサウェイCEOのグレッグ・アベル(写真=ソリューションニュース)
バークシャー・ハサウェイCEOのグレッグ・アベル(写真=ソリューションニュース)

バークシャー・ハサウェイは2日(現地時間)、1四半期決算を公表し、現金および短期国債の保有額が3,974億ドル(約586兆円)に達したと明らかにした。

昨年末の3,730億ドルから1四半期で240億ドル増えた。四半期ごとに過去最高を更新する流れだ。同日、オマハの年次株主総会の舞台に初めて立ったアベルCEOに、市場が投げかけた問いは明確だった。この資金をいつ、どこに、どう使うのか。

◎14四半期連続で売り続ける理由

答えはまだ出ていない。明らかなのは、買っていないという事実だ。バークシャーは今四半期、株式240億ドル分を売却し、160億ドル分を買い増した。80億ドルの純売りだ。14四半期連続で売り越しという記録が生まれた。3年半にわたり、一度も買い越しに転じていないという意味だ。

この流れは単なるポートフォリオ整理では説明できない。市場そのものに対する診断が背景にある。米国株主要指数の割高感、不安定な金利見通し、中東発の地政学リスクが一挙に積み上がった局面だ。どの資産も、バフェット-アベル体制が求める「安全域」を満たしていないというシグナルと受け止められる。

同じパターンは外部環境のデータでも確認できる。米国の30年物住宅ローン金利は4月30日に6.30%を記録した。1年前の6.76%より46ベーシスポイント下がったが、それでも依然として6%台半ばだ。

全米不動産協会(NAR)は、3月の中古住宅販売件数が9カ月ぶりの低水準だったと発表した。住宅市場が冷え込む一方で、資産価格はなかなか魅力的な水準まで下がらない。売り手は踏みとどまり、買い手はためらうという硬直状態が長引いている。

バークシャーの現金積み増しは、こうしたマクロの流れと正確に重なる。資産市場が答えを見つけるまで、次の急落か次の大型買収機会が来るまで、弾薬を満たしておく戦略だ。ウォーレン・バフェットが60年かけて磨いてきた方法論であり、アベルもその道をそのまま踏襲している。

◎営業利益は18%増でも市場予想には届かず

数字だけ見れば、1四半期の成績は悪くない。営業利益は113億ドルで、前年同期比18%増だった。純利益は101億ドルで、倍を超えた。ただし、市場コンセンサスの115億6,000万ドルには届かなかった。ファクトセット集計のアナリスト予想ベースだ。過去最高の現金に隠れたが、営業段階では期待をやや下回った。

業績を押し上げたのは保険だ。保険部門の引受利益は17億2,000万ドルで、28.5%増えた。昨年のカリフォルニア山火事損失の反動に加え、保険料の引き上げと損害率の改善が重なった結果だ。

再保険部門は特に好調だった。バークシャーの保険事業は単なる収益源ではなく、「フロート」と呼ばれる無コスト資金の供給源として機能する。保険金支払い前に受け取った保険料を運用し、投資収益を生み出す構造だ。このフロートの規模が大きいほど、バークシャーの投資余地も広がる。

明暗は保険の中でも分かれた。自動車保険子会社のガイコは、かえって利益が減少した。新規顧客獲得のためのマーケティング費用が増え、保険金支払いも膨らんだためだ。

競合のプログレッシブが市場シェアを伸ばす一方、ガイコは後れを取っている構図だ。アベル体制でガイコの立て直しが急務として浮上した。

◎22カ月ぶりの自社株買い、変化の小さな兆し

純売り一辺倒の中で、小さな変化も見えた。22カ月ぶりに自社株買いが再開されたのだ。1四半期の買い入れ規模は2億3,420万ドル。金額 자체は大きくないが、方向性に意味がある。

バークシャーは自社株買いに非常に慎重な会社だ。株価が本質的価値を明確に下回る場合にのみ買うという原則を守っている。22カ月ぶりの買い再開は、アベルが現在の株価を割安圏と見ているシグナルだ。

背景には株価の推移がある。クラスB株は5月1日に473.01ドルで引け、年初来で5.9%下落した。S&P500が同期間に示した動きと比べると、相対的に不振だ。

時価総額は約1兆200億ドルと依然として巨大だが、過去最高の現金と堅調な営業利益を踏まえると、市場は低い評価を付けていることになる。バフェット時代の後のリーダーシップに対する疑念が、株価にそのまま織り込まれている。

自社株買いの持つメッセージは2つある。1つは株主還元だ。適切な投資先がなければ、会社の資金で自社株を買い、株主価値を高める。もう1つは市場へのシグナルだ。

経営陣が自ら株主資本を投じるほど自社を信頼しているというメッセージである。今回の買い入れは、その両方に当たる。ただし規模から見れば、本格的な色づけというより、最初の一歩に近い。

◎米国経済の縮図が示したひび割れ

バークシャーの決算は、単一企業の成績にとどまらない。保険、鉄道、エネルギー、製造、消費財まで、米国産業全体にまたがる事業ポートフォリオを持つからだ。この構造ゆえに、バークシャーの四半期報告書は「米国経済の縮図」として読まれる。1四半期の報告は、その縮図に微細なひび割れを映し出した。

鉄道子会社のBNSFは回復基調を示した。貨物量の増加で利益が改善した。産業活動と貨物の流れが生きているというサインだ。一方、住宅建設と建材事業は需要減速に直面した。バークシャーはこれを「全般的な経済状況に伴う顧客需要の減少」と説明した。

30年物住宅ローンが6%台半ばで推移する中、住宅建設活動が縮小した流れがそのまま映し出された。米国の住宅着工件数は2021~2022年に年間160万戸を超えたが、2023年に142万戸へ低下し、その後は130万戸台で横ばいとなっている。

同じ米国でも、産業と住宅の温度差ははっきりしている。消費と産業活動は持ちこたえているが、金利に敏感な住宅は冷え込む。モザイク状の景気だ。

連邦準備制度理事会(FRB)が2025年末に3会合連続で利下げした後、2026年最初の会合で据え置きを選んだのも、このモザイクのためだ。片方を支えようとすれば、別の側のインフレを刺激するというジレンマが、金融政策を縛っている。

クラフト・ハインツなど既存投資先も重荷だ。評価額が簿価を下回る状態が続いており、減損リスクがくすぶっている。バークシャーが今四半期に追加損失を計上しなかったのは評価回復を待つ意図だが、回復しなければ最終的には帳簿に反映させなければならない。

◎アベル時代、答えは第2四半期に

市場が本当に見たいのは、アベルの色だ。バフェット時代をそのまま引き継ぐという点で安定感は確保した。ただ、安定だけで約1兆ドルの時価総額を正当化するのは難しい。586兆円の現金の一部でも動き出してこそ、次の成長像が見えてくる。

アベルが握るカードは3つほどある。1つ目は大型のM&Aだ。バークシャーは保険、鉄道、エネルギー以外にも、新たな中核事業を買収してポートフォリオを拡大してきた会社だ。2つ目は積極的な持分投資だ。

市場調整が深まれば、好みの銘柄を大規模に買い入れる方法である。3つ目は自社株買いの拡大だ。適切な投資先がないなら、自社資本を圧縮して1株当たり価値を引き上げる。

どのカードを、どの時点で切るのかが、アベル時代の色を決める。最初の四半期の答えは「まだ違う」だった。次の四半期、さらにその次の四半期を経るうちに、答えは輪郭を現していくだろう。市場が見ているのは結局、ただ一つだ。ウォーレン・バフェット不在のバークシャーが、ウォーレン・バフェットのやり方で生き残れるのか、それとも新しい方法を見つける必要があるのか。586兆円が、その答えをゆっくり解いていく鍵だ。

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