ヨーロッパで猛暑による人的被害が相次ぐなか、日本では個人用冷却ブースが猛暑対策の解決策として登場した。
米オンラインメディア「ガジェットレビュー」は20日(現地時間)、日本の冷蔵・自販機メーカーSDRSが開発し、産業用品供給会社トラスコ中山が販売する個人用冷却ブース「ドヒエモンボックス(Do Hiemon Box)」が今年4月に発売されたと伝えた。
真夏には気温が40度を超える猛暑が毎年繰り返される日本で、屋外作業者の熱ストレスを軽減するために開発された製品だ。外観は飲料自販機に似ており、「人間冷蔵庫」というあだ名が付いた。猛暑が日常となった国から生まれた実用的な解決策として注目を集めている。
◆ フランスだけで超過死亡1000人超…冷房が生存の問題になった
背景には、猛暑が災害レベルまで深刻化した現実がある。フランス公衆衛生局は、先月末に記録的な猛暑がピークに達した週に、約1000人の超過死亡が発生したと明らかにした。フランスとスペインの2カ国だけでも、先月の猛暑関連死者は2000人を超えると暫定集計された。
猛暑は「静かに広がる災害」と呼ばれる。台風や洪水のように目に見える破壊がないまま、高齢者や基礎疾患のある人、屋外労働者から順に倒れていくためだ。フランスでは自宅で死亡したケースも確認され、暑さを避ける場所の有無が生死を分けたとの指摘が出ている。
先月末には欧州各地で気温記録が更新された。ドイツでは41.7度、チェコでは41.9度、フランスでは40.6度まで上昇した。世界保健機関(WHO)は、欧州が最も急速に温暖化している大陸だとして、市民保護の取り組みを促した。
世界保健機関が欧州の猛暑による死者を1300人と集計したとの発表もあった。気温上昇の速度が、対応体制の整備を上回っているとの懸念が強まっている。
猛暑被害が拡大した背景として、冷房へのアクセス格差が挙げられている。冷房設備が十分に普及していない地域では、暑さを避ける場所そのものが不足し、高齢者や屋外労働者が被害にそのままさらされるという指摘だ。暑さをしのげる空間を、どれだけ速く、どれだけ広く提供できるかが猛暑対策の核心課題として浮上したわけだ。

◆ 5分で体温調整…1人集中冷却で電力は半分
ドヒエモンボックスは、発想を逆転させた製品だ。部屋全体を冷やすのではなく、1人に集中して冷却を提供する方式でエネルギー効率を高めた。
冷蔵・自販機メーカーが作った製品という点も目を引く。狭い空間を素早く冷やし、温度を一定に保つ冷却・断熱技術を、人が入るブースに応用したものとみられる。
内部に入ると、室内温度は直ちに15度に保たれる。頭や首、肩、背中など熱を逃がしやすい部位に、5度の冷気が集中的に噴射される。20〜40度の環境で5〜10分休むだけで体温調整効果が得られると、メーカーは説明している。
頭や首など特定の部位を狙った設計には、生理学的な計算がある。熱放散の速い部位を重点的に冷やせば、全身を冷房するより短時間で体温を下げられるという理屈だ。冷却対象を空間から身体へと絞った分、エネルギーの無駄も減る。
運用コストの負担も小さい。メーカー資料によると、時間当たりの運用費は約16円で、同等性能の移動式エアコンと比べて電力消費は半分程度だ。過冷却を防ぐため20分の自動停止機能があり、風量は3段階で調整できる。
1時間16円なら、1日8時間運転しても130円余り、約1200ウォン程度で済む計算だ。猛暑期間中も常時稼働させても、電気代の負担は大きくない構造といえる。
設置のハードルも低くした。高さ2029ミリ、幅931ミリ、重さ293キロのサイズで、キャスター付きで移動でき、追加工事なしにコンセントをつなぐだけですぐ使える。冷房の空白地帯へ機動的に配置できる点が、猛暑対策設備としての強みとされる。

◆ 1370万円・1人用の限界…休憩所モデルへの拡張可能性
価格は一般向けとはいえない。1台あたりの税抜価格は約9300ドル(約1370万円)で、一般消費者向けではなく産業用資本設備に分類される。建設現場や工場、倉庫、屋外イベント会場が主な設置先とされる。
産業安全の観点では、投資対効果を検討できるという分析もある。熱中症で作業者が倒れれば、治療や作業中断、人員不足のコストが発生する。短い冷却休憩で事故を減らせるなら、装置価格は保険料のような支出と解釈できるというわけだ。
公共部門での試験導入も始まった。群馬県前橋市役所には試験運用目的で寄贈され、来庁者に無料で提供されている。ただし一度に1人しか利用できない構造的な限界があり、利用者が集中する猛暑時には待ち時間が長くなるとの指摘もある。
価格の壁を下げる手段としては、購入ではなくレンタルで使う方式が挙げられている。猛暑の集中する夏の数カ月だけ必要な設備であることから、リースや自治体の共同購入で負担を分散すれば、導入のハードルを下げられるとの見方だ。
猛暑対策の専門家の間では、空間冷房から人体冷却へと重心を移す発想が持つ示唆は小さくないとの評価がある。都市全体の冷房インフラを短期間で拡充するのが難しい状況で、人が集まる場所に小型冷却設備を配置する方法が現実的な補完策になり得るということだ。
自販機のように街角のあちこちに置かれた冷却ブースが、猛暑時の避難所ネットワークの役割を果たすという構想も続く。5〜10分の冷却で十分という製品特性を踏まえれば、回転率を高めることで1人用の限界をある程度相殺できるとの計算だ。
韓国の状況とも重なる部分がある。建設現場や物流倉庫など屋外・高温事業場での熱中症予防が夏の課題として繰り返されており、暑さ対策休憩所や移動式日よけを中心にした従来の対応に、集中冷却型設備を加える案を検討する余地があるとの意見が出ている。
価格と収容人数の限界をどう補うかが普及の鍵になる見通しだ。猛暑が毎年強まる流れの中で、人を直接冷やす小型設備が冷房インフラの隙間を埋める補完財として定着できるかに関心が集まっている。