アンソロピック、AIコンピューティング確保に総力…2045年まで124兆円契約

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By Global Team

▶ アンソロピックは、AIサービスの需要増加に対応するため、米国各地でデータセンターとコンピューティング資源の確保を進めている。

▶ 11月2日に提出した修正証券登録届出書によると、コンピューティング・インフラ関連の長期契約額は8,954億ドル(約124兆円)に上る。このうち4,475億ドルは2030年末までに支出される予定だ。

▶ アンソロピックはチップや冷却設備を直接購入し、データセンターの設計にも関与している。

アンソロピックのAIモデル「Claude」の稼働画面。(写真=アンソロピック、CC BY 2.0)
アンソロピックのAIモデル「Claude」の稼働画面。(写真=アンソロピック、CC BY 2.0)

人工知能(AI)企業のアンソロピックが、急増するコンピューティング需要に対応するため、米国各地でデータセンターの確保に乗り出した。従来のクラウド事業者に依存する方式から脱し、かつての暗号資産マイニング企業やデータセンター専門企業にも協力先を広げている。半導体や冷却設備を直接購入するほか、閉鎖された発電所や工場をデータセンターに転換する案も検討している。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)は2日(現地時間)、アンソロピックが昨年末にコンピューティング資源の不足に直面して以降、アマゾン、グーグル、マイクロソフト、スペースXをはじめとする複数の企業と数十件の契約を結んだと報じた。データセンター用地や電力、半導体を確保するため、米国各地の開発業者と接触し、施設の建設にも直接関与しているという。

投資規模も大幅に拡大した。アンソロピックが同日、米証券取引委員会(SEC)に提出した修正証券登録届出書によると、コンピューティングとインフラ関連の購入・賃貸契約額は合計8,954億ドル(約124兆円)に達する。大半はAIモデルの開発やサービス運営に必要な長期契約で、一部は2045年まで続く。

◆ Claude Codeの人気が急上昇

コンピューティング資源の確保競争が本格化したのは昨年末からだ。AIコーディングツール「Claude Code」の人気を受けてサービス利用が急増した一方、処理に必要なサーバーや半導体の供給が需要に追いつかなかった。アンソロピックは一部の無料サービスの利用を制限し、製品価格を調整せざるを得なかった。

アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は昨年12月、NYT主催のディールブック・サミットで、今後必要となるコンピューティング規模を予測するのは難しいと語った。AI需要の不確実性があまりに大きく、投資規模を決める過程で誤りを避けるのは困難だという。

アンソロピックのトム・ブラウン最高コンピューティング責任者も9月、主要20カ国・地域(G20)関連のイベントで、コンピューティング資源の確保がAIの発展における主要なボトルネックだと指摘した。AIサービスの需要は急速に増えているものの、それを支える電力や建設人材が不足しているという。

2021年に設立されたアンソロピックは、これまでアマゾンとグーグルのクラウドインフラに大きく依存してきた。両社は2023年にアンソロピックへ計60億ドル(約8,300億円)を投資し、アンソロピックは調達した資金のかなりの部分をクラウドサービスの利用に充てた。

ブラウン氏はこうした契約を主導する一方、半導体の供給網も多様化させた。エヌビディアのグラフィックス処理装置(GPU)だけでなく、アマゾンのTrainium、グーグルのテンソル処理装置(TPU)、AMDのAI半導体も併用する方式だ。特定企業の半導体供給状況によってサービス運営が左右されるリスクを減らすための戦略である。

◆ アマゾン、グーグルに加え、スペースXやマイニング企業とも

アンソロピックは昨年末からコンピューティング供給契約を急速に増やしている。修正証券登録届出書によると、グーグルとは2033年までに最低1,213億ドル(約16兆8,000億円)、アマゾンとは2036年までに最低1,100億ドル(約15兆2,000億円)を支出する契約を結んだ。マイクロソフトとの契約額も、2033年までに最低449億ドル(約6兆2,000億円)に上る。

スペースXのAI事業子会社SpaceXAIとは、2029年までに最大1,205億ドル(約16兆7,000億円)規模のコンピューティング契約を結んだ。エヌビディアのGPUを利用したコンピューティングサービスに関する契約で、一定の初期義務期間を過ぎれば、90日前の通知で解約できる。グーグル、アマゾン、マイクロソフトとの最低支出契約とは条件が異なる。

大手クラウド事業者に加え、AI計算資源を専門に提供する「ネオクラウド」企業とも提携した。Fluidstackとは500億ドル(約6兆9,000億円)、Lambdaとは413億ドル(約5兆7,000億円)規模の契約を結んだ。かつてビットコインのマイニングを手掛けていたTeraWulfとHut 8も、アンソロピックにコンピューティング資源を供給するためのデータセンターを建設している。

アンソロピックがこうした企業まで巻き込んだ理由は、施設を確保するスピードにある。アマゾンやマイクロソフトのような大企業は、自社のAIサービス運営にも膨大なコンピューティング資源を必要としている。一方、暗号資産マイニング企業は、すでに確保している用地や電力供給設備をデータセンターに転用できるため、新たな施設を一から建設するより時間を短縮できる可能性がある。

コンピューティングサービス企業Modalのエリック・バーンハードソンCEOはNYTに対し、アンソロピックが市場に供給されるコンピューティング容量のかなりの部分を確保していると語った。AI企業間の競争は、モデル開発にとどまらず、電力やデータセンターをどの企業が先に確保するかという争いに広がっている。

◆ データセンターを自ら設計、チップや冷却設備も購入

アンソロピックは、施設の建設をコンピューティング供給業者に全面的に任せず、設計や設備調達にも関与している。データセンター建設や供給網の専門家を採用し、エヌビディア、AMD、ブロードコムなどから半導体を直接購入する方式だ。半導体に必要な冷却装置などの関連設備も確保し、施設の運営事業者に供給している。

こうすることで、データセンター建設業者が設備を別途調達する時間を短縮できる。Hut 8のアッシャー・ジェヌートCEOはNYTに対し、アンソロピックとデータセンター運営事業者は一つのチームのように動いていると説明した。

用地の確保にも直接乗り出した。アンソロピックは昨年からテキサス州やインディアナ州などでデータセンター開発業者と面会し、許認可の進捗や送電網への接続可能性を確認した。既存の産業施設を活用するため、閉鎖された石炭火力発電所や工場をデータセンターに転換する案も検討した。

ただし、施設を確保してもすぐに稼働できるわけではない。電力供給が不安定なら高価なAI半導体が損傷する恐れがあり、送電設備や冷却装置を設置する専門人材も必要だ。

実際、Fluidstackはアンソロピックが提案した一部のデータセンター設計について、電力の安定性に問題があると指摘した。両社は協議を経て解決策をまとめたが、AIデータセンターの電力管理がいかに難しいかを示す事例となった。

ニューヨーク州北部でデータセンターを建設するTeraWulfは、電気工の確保に苦労した。近隣で進められているNFLバッファロー・ビルズの新スタジアム建設工事と、熟練電気工の獲得を競わなければならなかったためだ。TeraWulfは最終的に地域の労働組合に、他地域で働ける電気工を求め、追加費用を負担して人員を確保した。

◆ 小規模施設も確保

アンソロピックはデータセンターの確保基準も緩和した。当初は大規模施設を中心に検討していたが、供給不足が深刻化すると、200メガワット(MW)規模の用地まで検討し始めた。その後は50MW規模の施設も受け入れ、不足する電力をバッテリーや天然ガス発電で補う案を進めた。

200MWは大規模データセンターに相当するが、AI企業が必要とするコンピューティング容量全体をまかなうには不十分だ。複数の地域で確保した施設を合わせ、必要な規模を確保しなければならない状況にある。

データセンター投資会社Energize Capitalのジョン・ターフマネージングパートナーは、アンソロピックは自社のコンピューティング供給網を完全には管理できないため、小規模施設を次々に確保して全体の容量を増やす必要があるかもしれないと分析した。大規模データセンターを一つ確保するのが難しければ、すでに送電網につながっている用地を見つけ、複数の施設を運営する方法が代替策になるという。

この過程では、データセンター用地だけでなく、電力供給能力や送電網への接続時期も重要な競争要素となっている。半導体を購入しても、それを設置する場所と電力がなければ、実際のAIサービスに活用できないためだ。

◆ 資金調達負担が拡大

コンピューティング資源の確保競争は、アンソロピックの財務負担につながっている。2日に提出した修正証券登録届出書では、コンピューティング・インフラ関連の契約総額が8,954億ドルと集計された。このうち4,475億ドル(約62兆円)は2030年末までに支出され、残りの大部分は2031年から2045年にかけて支出される予定だ。

今後12カ月間に支払う金額だけでも約698億ドル(約9兆7,000億円)に上る。ただし、すべての契約が確定的な支払い義務というわけではない。契約総額のうち約2,138億ドルは、契約相手の資金調達や許認可などの条件が満たされない場合に終了できるか、一定の解約権が適用される。

売上高も急速に伸びている。アンソロピックの今年第3四半期の売上高は約170億ドル(約2兆3,500億円)で、前年同期の約14億ドルから大幅に増加した。しかし同期間のコンピューティング・インフラ費用は約99億ドル(約1兆3,700億円)と、売上高の58%に達した。営業損失は5億6,700万ドルだった。

同社は増加する投資費用を賄うため、新規株式公開(IPO)や外部からの資金調達を活用している。NYTによると、アンソロピックは今月の上場を通じて最大1,000億ドル(約13兆8,000億円)を調達する案を進めている。実際の公募規模や価格、上場時期はまだ決まっていない。

半導体の確保に向けた独自の金融スキームも整えた。先月26日に発表された総額630億ドル(約8兆7,000億円)の金融取引は、ブロードコムのAI半導体とネットワーク機器を確保したうえで、アンソロピックにリースする仕組みだ。バンク・オブ・アメリカ、シティ、モルガン・スタンレーなどが資金調達に参加し、ブラックストーンは劣後融資を担う。

◆ コンピューティング資源の確保競争、海外データセンターにも広がるか

アンソロピックは、米国に集中するインフラのリスクを減らすため、海外でのデータセンター開発も検討している。以前提出した証券登録届出書では、海外施設の開発に向けた意向書を締結したと明らかにしたが、対象国は公表していない。

AI企業の競争力は、モデルの性能だけでなく、それを稼働させるコンピューティング規模にも左右される。十分な半導体を確保しても、電力や用地、建設人材が不足すれば、サービスの拡大に支障が生じる可能性がある。

アンソロピックは今年、3.5ギガワット(GW)を超えるコンピューティング容量を確保し、来年も同程度の規模を追加する見通しとされる。ただし、各施設の実際の稼働時期や、契約条件に基づく供給可能容量はすべて公表されていない。

今後の焦点は、契約したコンピューティング資源を計画どおりに稼働させ、急増する売上高で長期的な投資負担を賄えるかどうかだ。