イーロン・マスクの宇宙企業スペースXが12日(現地時間)、ナスダックに上場する。企業価値は1.8兆ドルで、約2740兆ウォン(為替レート1520ウォン基準)に達する。史上最大規模の企業公開で、これまで宇宙投資の頂点とされてきたロケット・ラボの地位を揺るがしている。
公募価格は1株135ドル、発行株式数は5億5560万株だ。今回の上場で吸い上げる資金は約750億ドル(約114兆ウォン)にのぼる。
2019年にサウジアラムコが打ち立てた最大IPO記録を更新する。全体の30%を個人投資家に配分した点も異例だ。国内でも宇宙テーマに資金が流れ込み、米航空宇宙局(NASA)の名前を冠したある上場投資信託には、この2か月で26億ドルが流入した。
◆ 1.8兆ドルの企業価値、売上の96倍という衝撃
スペースXの昨年の売上高は187億ドル(約28兆ウォン)だった。1.8兆ドルの企業価値をこの売上で割ると、株価売上高倍率(P/S)は96倍に達する。企業が1年間に稼ぐ金額の96倍を払って買うという意味だ。
比較対象としてロケット・ラボを見てみよう。前日(9日)終値基準の株価は119ドル、時価総額は658億ドル(約100兆ウォン)だ。直近1年で株価が300%近く急騰し、宇宙株の中で最も熱を帯びた銘柄だが、96倍を前にするとむしろ割安に見える。
表面的な数字だけを見ると、スペースXは途方もなく高い。だが、売上を測る時点を1年先にずらすと、その印象は揺らぐ。
◆ AIの賃貸契約が分母を変える
鍵を握るのは人工知能(AI)だ。スペースXは今年2月、マスクのAI企業xAIを吸収した。ロケットと衛星を超えて、巨大なデータセンターを抱える会社へと変貌した。
2件の大型契約が勝負を広げた。アンソロピックはテネシー州メンフィスのデータセンターを丸ごと借り、月12億5000万ドルを支払うことにした。グーグルはNVIDIAのGPU11万個を使う対価として、10月から月9億2000万ドルを支払う。2契約を合わせると年間260億ドルとなり、スペースXが昨年の事業全体で稼いだ金額を上回る。
この賃貸収益を今年の売上に反映すると、計算は変わる。昨年の売上187億ドルがそのまま続くと仮定し、今年計上されるアンソロピックの5か月分(62億5000万ドル)とグーグルの3か月分(27億6000万ドル)を加えると、推定売上は277億ドル(約42兆ウォン)になる。1.8兆ドルをこの売上で割ったP/Sは65倍だ。売上が300億ドルまで増えれば、60倍までさらに下がる。
ロケット・ラボの今年予想P/Sは52倍だ(FactSetコンセンサス基準)。96倍と52倍の遠い差は、65倍と52倍の狭い差へと圧縮される。高く見えたスペースXの企業価値が、実際には競合とほぼ同水準だという結論に至る。
ここではさらに根本的な問いが浮かぶ。スペースXが提出した上場書類には、28兆5000億ドル規模の市場を狙うと記されており、その大半は宇宙ではなく企業向けAIから生まれる。投資家が買うのがロケット企業なのかAIインフラ企業なのか、そこからして分かれるわけだ。
◆ 倍率が似ていても、リスクまで同じではない
計算をここで止めれば、半分しか読んでいないことになる。同じP/Sでも、その中に含まれる売上の性質はまったく異なる。
ロケット・ラボは打ち上げサービスと衛星製造で稼ぐ純粋な宇宙企業だ。第1四半期の売上高は2億ドルで、受注残高は22億ドルを超えた。次世代ロケット「ニュートロン」は初飛行前から5件の打ち上げ契約を獲得している。会社の命運は、このロケットの成功にかかっている。
スペースXの低下した倍率は、性格の異なる土台の上に成り立っている。AI賃貸契約がその分母を支えているが、契約には出口条項が付いている。グーグルは年末以降、90日前の通知だけで契約を終了でき、GPU納品が遅れれば撤退する権利も持つ。
AI部門はまだ赤字だ。第1四半期だけで24億ドル超の営業損失を計上した。独立した評価も警戒を鳴らしている。投資情報会社モーニングスターは、キャッシュフロー基準の妥当価値を7800億ドルと試算した。上場時の企業価値の半分にも満たない。
もっとも、反対側の論理もある。ゴールドマン・サックスは、スペースXのAI売上が2030年に3000億ドルを超えると見ている。賃貸事業が予想通りに回れば、今の65倍はむしろ割安かもしれないという計算だ。強気派と慎重派が同じ数字を前に真逆の解釈を示している。
投資家が注視すべき点はここだ。P/S65倍という数字よりも、その分母を支える売上がどれだけ長く持続するかが重要だ。倍率が低く見えるという理由で見出しを追うより、何を買っているのかを問い直す方が安全だ。全体の30%が個人投資家に開放されるだけに、上場初期の乱高下の衝撃も、個人の側により大きく返ってくる。
スペースXとロケット・ラボのバリュエーションは、今は一点で重なっている。上場後、市場がスペースXの圧倒的な規模にプレミアムを上乗せするのか、それともAI契約の不確実性にディスカウントを付けるのかによって、両社の差は再び広がるとみられる。
ロケット・ラボの運命がニュートロンにかかっているなら、スペースXの運命はAI売上の継続性にかかっている。2つの宇宙株の本当の勝負は、上場ベルが鳴った後に始まる。