連載を始めるにあたって
気候に関する記事はあふれている。記録更新のニュース、氷が溶けるという警告、何度上がったという数字。読者は知っている。地球が熱くなっているという事実を。
本当に分かりにくいのは、その先だ。なぜある大陸は2倍の速さで熱くなるのか。なぜ豊かな都市が猛暑で崩れるのか。どんな対策が実際に人を守ったのか。答えはいつも記事の外にあった。
世界保健機関は先月、欧州の猛暑期間の超過死亡者数を1,300人以上と集計した。同機関は、対応策があるだけで死者を80%減らせたとも明らかにした。言い換えれば、備えが不足している分だけ被害が大きくなったということだ。気候危機はもはや気温の問題ではなく、備えの問題なのだ。
「気候、だからどうする」を始める。危機を知らせるだけで終わらない。原因を最後まで掘り下げ、すでに検証された解決策を探す。失敗した対策も記録する。何が通用し、何が通用しなかったのかを見極めてこそ次がある。<編集者注>

【主な内容】
▶ 米シカゴ大学クライメート・インパクト・ラボは27日(現地時間)に発表した報告書で、気候変動による気温上昇の影響で2050年には年間43万人が追加で命を落とす可能性があると予測した。犠牲は豊かな国より貧しい国で10倍多く発生する。
▶ 生死を分ける条件は冷房だ。報告書は、極端な暑さにさらされながらも冷房に使う電力の増加を期待しにくい「冷房の罠」地域を18カ国で見つけた。6億7,600万人が暮らし、年間37万7,000人が命を落とすと推計された。
▶ 罠に閉じ込められた地域は、ニジェール、マリ、ブルキナファソ、チャドなどサハラ以南アフリカ北部と、パキスタン、バングラデシュ、ネパール、ミャンマーなど南アジアに集中している。
▶ 同じ暑さでも所得が運命を分ける。ニジェールの一人当たり電力使用増加分はサウジアラビアの9分の1にとどまり、2050年のニジェールではサウジより年間2万7,000人多く犠牲になると予測された。
▶ 低所得国の一人当たり電力増加分は、LED電球1個を4カ月つける程度にとどまる。中所得国の冷房用電力は低所得国より7倍速く増える。
▶ 解決策は二つに示される。安くて安定した電気を供給する電力市場改革と、早期警報や受動的冷却のように電力への依存が少ない適応策を並行することだ。
猛暑が生命を脅かす時代に、エアコンをつけられる国とつけられない国の格差が、人的被害の格差として固定化されつつある。
米シカゴ大学の研究陣が率いる気候研究協力体クライメート・インパクト・ラボは27日(現地時間)、気温上昇がエネルギー消費に与える影響を分析した適応ロードマップ報告書を発表した。気候変動に伴う気温変化により、2050年には過去の気候と比べて年間約43万人がさらに命を落とし、その重みは貧しい国に10倍多くのしかかるという内容だ。
◆ ニジェールとサウジ、同じ暑さでも生死は違う

世界全体で見れば電力は増える。報告書は2050年までに世界の一人当たり電力消費が平均6%ほど増えると見込んだ。問題は、増え方が地域ごとに天と地ほど違ううえ、本当に電力が最も必要な場所には届かないことだ。
報告書が新たに示した概念は「冷房の罠」だ。暑さへのさらされ方は最大なのに冷房は最小、つまり極端な猛暑に苦しみながら冷房に使う電力消費の増加を期待しにくい地域を指す。研究陣はこの条件に当てはまる地域を18カ国で見つけた。6億7,600万人が暮らす地域である。
暑さは静かに健康をむしばむ。体温が上がると心臓は熱を逃がそうとしてより速く動き、汗で水分が失われると血液が濃くなり、心血管と腎臓に負担が積み重なる。高齢者や慢性疾患患者、屋外労働者が真っ先に倒れる。冷房はその連鎖を断つ最も確実な手段とされる。
報告書では、罠に閉じ込められた地域の被害を具体的な数字で示した。その地域だけで2050年には年間37万7,000人が暑さで命を落とすと推計された。すべて低所得国または中低所得国の住民だ。ニジェール、マリ、ブルキナファソ、チャドなどサハラ以南アフリカ北部に多くが集中し、残りはパキスタン、バングラデシュ、ネパール、ミャンマーなど南アジアに住む。
報告書は対照例として湾岸産油国を挙げた。バーレーン、クウェート、サウジアラビアはサハラ以南アフリカと同じくらい暑い。だが、冷房用電力をはるかに多く使い、今後さらに増やす余力もあるため、人的被害は大幅に少ないと見込まれた。
ニジェールの一人当たり電力使用増加分はサウジの9分の1にとどまる。その差によって、2050年のニジェールではサウジより年間2万7,000人多く犠牲になると算出された。気温はほぼ同じでも、使える電力の量が両国の夏を分けるのだ。
気温ではなく所得が生死を分ける、という結論に至る部分である。マイケル・グリーンストーン・クライメート・インパクト・ラボ共同設立者(シカゴ大学経済学教授)は「エアコンは命を救う装置であり、豊かな国でのエアコン普及は間違いなく増える」と述べた。そのうえで「多くの国の人々は同じ方法で対応できないというのが研究結果だ」とし、「気候変動に最も少なくしか寄与していない国々で最も大きな犠牲が生じる、気候の極めて大きな残酷さだ」と指摘した。
◆ 貧しさのほうが暑さより怖い

格差が広がる仕組みは意外と単純だ。地球が暑くなれば冷房需要が増え、所得が上がってこそ電気料金を払う力も生まれる。
この二つの条件がかみ合う中所得国の冷房用電力消費は、気候変動の影響で低所得国より7倍速く増える見通しだ。経済が大きくなるほどエアコンも一緒に増える経路である。
低所得国はその経路に乗れない。温暖化による低所得国の一人当たり電力消費増加分は、LED電球1個を4カ月つけられる程度にとどまると推計された。冷房どころか、電灯1つを灯すのにも足りない量だ。
電力網は不十分で、電気は高く、供給は途切れがちという電力市場の失敗が根底にあるという診断が出ている。エアコンを買う金がなく、買えても動かす電気がなく、電気があっても料金を支払えないという三重の壁だ。
不公正な構造だという指摘もある。地球を温めた温室効果ガスは、工場を動かし車を走らせてきた裕福な国が何十年にもわたって排出してきたものだ。ニジェールのような国が排出した量はわずかである。
だが、暑さの被害は、実際には最も排出が少なかった国々に集中する。他人に頼まれた食事代の請求書を代わりに受け取るようなもので、富裕国が貧困国の適応コストを分担すべきだという要求が国際社会で繰り返されてきた。
富裕国と貧困国の非対称性は、先の報告でも確認されている。クライメート・インパクト・ラボが今年3月に公表した健康編の報告書では、気温上昇による人的被害の90%が低・中所得国で発生すると見込まれた。スカンディナビアなど高緯度地域では寒波による被害が減り、気温関連リスクはむしろ低下する一方、暑い低緯度の貧困地域は正反対の方向へ押し流される。
タマ・カールトン・クライメート・インパクト・ラボ研究責任者は当時、負担が極めて不均等であり、それはそこがより暑いからだけでなく、結局は所得の問題だと説明した。
格差は一国内でも起きている。健康編の報告書によれば、米国では北部で気温関連の人的被害が10万人当たり30~60人減る一方、南部では10人増える。どの国でも最も暑く、最も貧しい地域から崩れていくという事実は、国境の内外を問わない。
◆ 解決策その1、電気を届かせる。解決策その2、電気なしで冷やす

報告書が示した処方箋は二つに分かれる。まずは電気を届かせる道だ。グリーンストーン教授は「安くて安定したエネルギーを供給する電力市場の働きを改善する時間はあまり残されていないという警鐘だ」と強調した。
発電所や送電網のような大型インフラには数十年かかるため、各村に太陽光パネルとバッテリーを置き、地域内で電気を作って使う小規模な独立電力網が補完策として挙げられる。水道工事が終わるのを待つあいだに村に井戸を掘るようなものだ。
電力にあまり頼らない適応策がもう一つの柱だ。アシュウィン・ロード・クライメート・インパクト・ラボ研究員は、エネルギーアクセスの改善とともに、猛暑の早期警報と行動計画、医療アクセス拡大、脆弱層を対象にした支援プログラムを代案として提示した。
先の連載で扱ったように、世界保健機関は欧州で猛暑対応計画と早期警報だけで人的被害を約80%減らせたと推計している。文字メッセージ一つで猛暑を予告し、最も暑い時間帯の屋外労働を止め、地域の保健担当者が脆弱な世帯を確認するやり方は、大規模な電力網がなくても機能する。電気がなくても動く安全網はすでに実証されているということだ。
建物と都市を変える受動的冷却も同じ系統にある。電気スイッチなしで温度を下げる方法を総称するもので、屋根や壁を明るい色に塗って日差しを反射させ、日陰や緑地を増やす方法が代表的だ。
電力網のない地域でも室内温度を下げられる。欧州猛暑編で紹介したスペイン・ムルシアの明るい色の路面のように、富裕国で実証された技術を貧困国向けの低コスト適応策として移せるのではないかという提案が出ている。
二つの解決策は時間軸が違うだけで、共に進めなければならない。当面の今夏は警報のメッセージと日陰でしのぎ、次の10年の夏は電力を引き込んで備える、その順序だ。
国際社会の仕組みも動き始めている。国連気候会議は、気候被害を受けた途上国を支援する損失と損害基金を立ち上げ、国連は2027年までに全人類を災害早期警報網の下に置く計画を進めてきた。資金と警報という二つの柱が、冷房の罠地域に本当に届くかが焦点とされる。
もっとも、ロード研究員は「多くの適応方法はまだ検証されていない」と指摘した。クライメート・インパクト・ラボは、効果が証明された適応策を集めた「適応インベントリー」を作成し、各国政府と支援機関に提供している。見た目が良い対策と、実際に命を救った対策を区別しようということだ。何が通用し、何が通用しなかったのかを見極めて使い分けようという趣旨で、連載が掲げてきた方向性と同じ問題意識である。
◆ 他人事ではない、私たちが解くべき宿題と役割
前回の連載で確認した欧州の夏とも重なる。冷房普及率20%の欧州でも猛暑で数千人が命を落としたのに、それよりはるかに普及率が低い冷房の罠地域が経験する夏は想像に難くない。
冷房格差は韓国の中にもある。エアコンがあっても電気料金が気になってつけられない世帯、扇風機一台で夏をしのぐコシウォンや一人暮らし高齢者世帯が猛暑被害の最前線に立つ。
政府がエネルギーバウチャーで脆弱層の冷房費を支援し、地方自治体が暑さしのぎの避暑施設を運営する理由はそこにある。
支援対象と支給額が猛暑の強さに追いついているのか、点検が必要だという指摘が続いてきた。冷房の罠が国同士にだけあるのではなく、都市の路地の中にもあることを示す場面である。
外に向けた役割も語られる。韓国は高効率エアコンや冷蔵設備を作る家電大国であり、援助受け入れ国から供与国へと上がった国だ。
冷房の罠地域に太陽光連動型冷房や低電力冷却技術を普及させるグリーン公的開発援助は、人道的貢献であると同時に市場開拓でもあるという分析が出ている。
検証された適応策を現地条件に合わせて移す作業に、韓国企業と政府が入り込む余地があるという話だ。猛暑を乗り切る技術が次世代の輸出品目になる可能性も取り沙汰される。
温室効果ガスを減らす努力だけでは、すでに予約された暑さは避けられない。だから、暑さに耐える準備を一緒にしなければならないのだ。43万人という数字は予言ではなく警告である。
電気と対策が適時に届けば、いくらでも減らせる数字だという意味だ。電気が届く速さと、検証された対策が広がる速さが、その数字を減らせるかどうかを左右する見通しだ。