人工知能の売上が急増したにもかかわらず、次四半期の見通しが期待を下回り、株価が急落した。
エヌビディアやTSMCは上昇した一方で、資金はヘルスケアや金融へ移動した。
[要点]
▶ ブロードコムは市場予想を上回る四半期決算を発表したが、AI半導体の次四半期売上見通しが投資家の期待に届かず、株価は12.56%急落した。
▶ マイクロン、ウェスタンデジタル、ARMはそろって下落したが、エヌビディア、マーベル、TSMC、ASMLは上昇し、半導体全体の弱さではなく銘柄ごとの選別が進んだ。
▶ 流出した資金はヘルスケア(+3.16%)や金融、通信へ移動し、S&P500とダウ平均はむしろ上昇して終えた。
▶ 原油価格が3%以上下落し、市場金利も連れて低下した一方、安全資産である金価格は1%近く上昇した。
▶ 今回の急落の本質は業績不振ではなく、過度に高まった期待だ。成長が速くても、市場期待を下回れば株価は揺れる。

昨夜のニューヨーク市場で、半導体の主力株ブロードコムが12.56%急落した。四半期決算は市場予想を上回ったが、人工知能(AI)半導体の今後の売上見通しが投資家の期待に届かなかったためだ。好決算がそのまま株価上昇につながらない流れが、より鮮明になっている。
◆ 好決算でも12%急落したブロードコム
ブロードコムは前日、取引終了後に四半期決算を公表した。売上高と利益の両方が市場予想を上回った。それにもかかわらず、株価は通常取引で12.56%下落した。AI半導体部門の将来売上に対する期待値を満たせなかったことが、売りを促したとみられる。
急落の衝撃はメモリ企業にも波及した。マイクロン・テクノロジーは7.63%下落し、サンディスクとウェスタンデジタルはそれぞれ3.89%、3.13%下落した。半導体設計企業ARMも4.47%安となった。
ただし、下落が業界全体に広がったわけではない。
◆ 銘柄ごとに分かれた半導体株
同日、エヌビディアは1.97%上昇した。マーベルは4.89%高となり、ファウンドリー大手TSMCは1.85%上昇した。半導体製造装置大手ASMLも2%近く上げた。ブロードコムと競合する、あるいはAI半導体の供給網を支える銘柄はむしろ堅調だった。
銘柄別の明暗は市場の判断を示している。今回の下落は半導体産業そのものの減速というより、ブロードコム1銘柄に過度に集まっていた期待が修正された結果に近い。投資家は産業の成長性と個別企業の株価水準を分けて評価し始めている。
指数もそれを裏づける。フィラデルフィア半導体指数は2.15%下落し、ナスダック指数は0.09%安だった。一方、S&P500とダウ平均はそれぞれ0.41%、1.73%上昇した。市場全体としては高値引けとなった。
◆ ヘルスケア・金融へ移った資金
半導体から流出した資金は防御的な業種へ向かった。ヘルスケアが3.16%上昇し、最も高い上昇率を記録し、金融、通信、不動産が2%台の上昇で続いた。生活必需品と情報技術(IT)を除く全業種が上昇した。
製薬株の上昇が目立った。主要投資銀行(IB)が投資判断を引き上げたユナイテッドヘルスケアは5.16%急騰し、イーライリリーとメルクはそれぞれ4.31%、4.85%上昇した。大型テックではアルファベットが3.68%上昇し、流れを主導した。アマゾンは1.51%上昇し、テスラは1.24%下落した。
外部要因もリスク選好を後押しした。イスラエルとレバノンの停戦合意を受け、WTI原油価格は3%超下落した。原油安は物価負担を和らげ、市場金利の低下につながった。
米国債10年物利回りは、0.01%ポイントを意味するベーシスポイント(bp)で2.1bp低下し、4.47%となった。政策金利見通しに敏感な2年物は3.8bp下がり、4.04%だった。安全資産の金価格は1%近く上昇し、1オンス4,505ドル前後で取引を終えた。
今回の急落の核心は、業績ではなく期待にある。AI売上が急拡大している企業でさえ、市場の高まったハードルを満たせなければ株価は揺れることが確認された。成長の速度と株価に織り込まれた期待は、必ずしも一致しないという意味だ。
資金が半導体からヘルスケアや金融へ移った動きは、投資家のリスク認識の変化を示している。AI一方向に偏っていた資金が分散し始めた局面で、市場は成長期待と実際の業績の間にあるギャップを改めて測り直している。