宇宙の暗黒物質90年の謎、答えは5次元にあった

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By Global Team

宇宙を構成する物質のうち約27%を占めると推定される暗黒物質が、人間が認識できない「隠れた5次元」に存在するという新たな理論が示された。隠れた次元特有の幾何構造が暗黒物質の性質を決定するという内容で、90年近く続く暗黒物質未検出の状態を説明する枠組みになり得るとの分析が出ている。

英国シェフィールド大学の研究チームは13日(現地時間)、この内容を含む研究結果を国際学術誌『フィジカル・レビューD』に掲載したと明らかにした。研究は、英国王立協会のドロシー・ホジキン上級研究フェローであるユダイ・チャイ博士が主導した。

研究の要点は次の通りだ。暗黒物質は「暗黒光子」と呼ばれる粒子とともに、隠れた次元に存在する。この次元の幾何構造が2つの粒子の質量を特定の比率に整列させ、「共鳴」状態を生み出す。この共鳴が、初期宇宙では暗黒物質の相互作用を増幅させ、現在は条件がずれて相互作用が弱まったという説明である。

◆ 重力によってのみ存在が確認された宇宙構成物質

ハッブル宇宙望遠鏡の2007年観測画像(左)とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の2026年観測画像(右)。向上した解像度を通じて、暗黒物質の分布と影響をより鮮明に示している。資料=NASA・STScI・A.ペイガン
ハッブル宇宙望遠鏡の2007年観測画像(左)とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の2026年観測画像(右)。向上した解像度を通じて、暗黒物質の分布と影響をより鮮明に示している。資料=NASA・STScI・A.ペイガン

暗黒物質は光を放たず、反射もしない。どの望遠鏡でも直接観測されたことはない。それでも科学界はその存在自体を疑っていない。根拠は重力だ。

銀河外縁にある星々は、観測される回転速度に基づけば銀河の外へ弾き飛ばされるはずだ。見えている星とガスの質量だけでは、この速度を支える重力が得られないからである。

実際には銀河の形は保たれている。見えない物質が追加の重力を供給しているという計算が成り立つ。科学界が暗黒物質を「銀河をつなぎ止める接着剤」に例える理由である。

観測証拠は積み重ねられてきた。1930年代にはスイスの天文学者フリッツ・ツビッキーが銀河団の観測で最初に問題提起を行った。1970年代には米国の天文学者ベラ・ルービンが銀河の回転速度の測定で存在の根拠を補強した。その後、暗黒物質は仮説段階を超え、標準宇宙論を構成する要素として定着した。巨大質量が背後の天体の光を曲げる重力レンズ現象や、宇宙初期の光が残した宇宙背景放射の観測結果も、同じ結論を指し示している。

欧州宇宙機関のプランク衛星の観測によると、星や惑星のような通常物質は宇宙構成の5%程度にとどまる。暗黒物質が約27%を占め、残りは暗黒エネルギーに分類される。暗黒エネルギーは宇宙膨張を加速させる未知の要素であり、暗黒物質とは別の概念である。

暗黒物質は宇宙構造形成の過程で重要な役割を果たしたと評価されている。ビッグバン後、暗黒物質が先に重力で集まって骨格を作り、その上に通常物質が集まって銀河と星が形成されたというのが標準宇宙論の解釈だ。暗黒物質の性質が解明されれば、銀河形成過程と宇宙進化の計算精度は変わる。

存在は確認されたが、実体は解明されていない。90年にわたる探索にもかかわらず、暗黒物質粒子が直接検出された例はない。現代物理学が解けていない最大の難題の一つに数えられる。

候補理論はあった。物理学界は、他の物質と弱くしか反応しない重い仮想粒子「WIMP」を長らく最有力候補として検討してきた。超軽量粒子アクシオンも候補群に含まれる。WIMPを狙った検出実験だけでも世界で数十に及ぶが、決定的証拠は得られていない。検出器の感度が世代を重ねて大きく向上しているにもかかわらず、探索可能領域が狭まる一方で、WIMP仮説の立場も弱まってきたとの指摘もある。

暗黒物質は大衆文化でも頻繁に取り上げられてきた。映画『スタートレック』では惑星を破壊する渦として、ファンタジー小説『黄金の羅針盤』シリーズでは多元宇宙を支える物質「ダスト」として登場する。

◆ 次元の幾何構造が粒子の質量を共鳴状態に整列させる

シェフィールド大学の研究チームは、この問題に「次元」という概念でアプローチした。人間が認識する世界は、横・縦・高さの3つの空間次元に時間を加えた4次元で記述される。新理論はその先に、観測されない5番目の次元が存在すると仮定する。

余剰次元の仮説は物理学で長年研究されてきたテーマだ。1920年代には欧州の物理学者たちが重力と電磁気力を統合する過程で5次元を導入し、現代の弦理論は余剰次元が極めて小さく巻き込まれているため観測されないと説明する。暗黒物質が余剰次元に存在する可能性も、近年数年にわたり複数の研究で検討されてきた。

今回の研究は、そこに新たな要素を加えた。暗黒物質が、力を媒介する粒子である暗黒光子とともに隠れた次元に存在するという構図だ。暗黒光子は、光子が電磁力を媒介するのと同様に、暗黒物質粒子間の相互作用を媒介する仮想粒子である。

物理学界では、通常物質とほとんど相互作用しない未知の粒子群を「暗黒セクター」という概念でまとめて研究してきた。今回の理論は、暗黒物質と暗黒光子で構成される暗黒セクターが、余剰次元内で機能すると設定したものである。

研究チームの計算によると、隠れた次元特有の幾何構造は、暗黒物質と暗黒光子の質量を精密な配列に整列させる。2つの粒子の質量が特定の比率を成すと、「暗黒物質共鳴」現象が起きる。研究チームはこれを、楽器が正しい音程に達したときに強く響く現象になぞらえた。

チャイ博士は、「暗黒物質共鳴は、初期宇宙で暗黒物質がどのように生成され、今日どのように探索すべきかについての理解を変え得る強力な概念だ」と述べた。

共鳴という概念自体は既存理論にもあった。ただし従来モデルでは、共鳴条件を理論の中から導けなかった。粒子の質量が精密に一致するという条件を、研究者が仮定として置く必要があった。物理学界で「微調整問題」と呼ばれる弱点である。

新理論はこの点を異なる形で扱った。質量の整列が仮定や偶然ではなく、隠れた次元の数学構造から自然に導かれるというのである。チャイ博士は、「従来の共鳴モデルの多くは共鳴を仮定として扱っていたが、今回の研究は共鳴が隠れた次元の幾何構造から直接現れ得る、より深い起源を示した」と説明した。

◆ 初期宇宙での相互作用と現在の未検出を同時に説明

重力レンズ観測をもとに推定した巨大銀河団周辺の暗黒物質分布。暗黒物質は直接見えないため、重力効果を通じて間接的に探索する。資料=NASA・ESA・ハッブル宇宙望遠鏡
重力レンズ観測をもとに推定した巨大銀河団周辺の暗黒物質分布。暗黒物質は直接見えないため、重力効果を通じて間接的に探索する。資料=NASA・ESA・ハッブル宇宙望遠鏡

今回の理論が狙うのは、暗黒物質研究が抱えてきた矛盾だ。標準宇宙論によれば、現在観測される暗黒物質量が生じるには、初期宇宙で暗黒物質が強く相互作用していなければならない。一方で、現在の検出器では相互作用の信号が捉えられない。2つの条件を1つの理論で説明することが課題として残っていた。

ビッグバン直後の宇宙は高温・高密度状態だった。粒子の生成と消滅が繰り返されるこの環境で、暗黒物質の総量が決定されたというのが標準シナリオである。

共鳴の概念はこのすき間をつなぐ。宇宙初期の特定の時期に共鳴条件が満たされることで相互作用が大きく増幅され、宇宙が膨張して冷えるにつれて条件から外れ、相互作用が弱まったという論理だ。

共鳴の時期に暗黒物質同士が衝突して消滅する反応が活発化し、この過程が現在残っている暗黒物質量を決めたという計算である。この枠組みでは、現在検出されない状況も理論と矛盾しない。

この説明は、世界の検出実験が置かれた状況とも重なる。探索方法は大きく3つに分かれる。地下検出器で暗黒物質粒子が原子核に衝突する瞬間を捉える直接検出、暗黒物質が消滅して残す信号を宇宙観測で探す間接検出、粒子加速器で暗黒物質を人工生成する方法である。いずれの経路でも、確定的結果は出ていない。

直接検出実験は大半が地下深くで行われる。地表では宇宙から飛来する粒子が検出器に雑音を生じさせるため、厚い岩盤で遮蔽する方式だ。米国のLZ実験は、液体キセノンを満たした検出器で暗黒物質粒子が原子核と衝突する瞬間を探している。イタリアのグランサッソ地下研究所でも同じ原理で実験が行われてきた。日本と中国も大型地下実験施設を運営し、探索競争に加わっている。決定的な信号はまだ出ていない。

韓国の研究チームも検証競争に参加している。基礎科学研究院の地下実験研究団が主導するコサイン-100実験は、2025年9月にイタリアのDAMAチームが25年間暗黒物質の証拠だと主張してきた信号が、暗黒物質に由来するものではないとする分析結果を示した。

DAMAチームは、地球が太陽を公転する間、暗黒物質と衝突する頻度が季節によって変化するという「年次変調信号」を根拠としてきた。コサイン-100は同方式の検出器で6年分のデータを分析し、その信号が暗黒物質によるものではないという結論を国際学術誌『サイエンス・アドバンシズ』に発表した。

有力候補が次々と排除される局面で、未検出状態そのものを説明する理論枠組みが提示された点に意味があるとの分析がある。

◆ 検出実験に新たな探索対象を提示

研究チームは、今回の理論が実験物理学者に明確な探索対象を与えると説明した。

暗黒物質と暗黒光子の質量が特定の比率に整列しているなら、検出器が集中すべき質量領域と求められる感度範囲が絞られるからである。共鳴条件が成り立つ場合に予想される相互作用の強さと質量配列を理論が具体的に提示するため、検出実験はこの範囲を優先的な探索対象にできる。

チャイ博士は、「暗黒物質を理解することは、宇宙が何で構成されているのかという人類の知識における重大な前進になるだろう。今回の研究は、暗黒物質と隠れた次元という基礎物理学の二大課題を結びつける」と述べた。

検証は今後の課題として残る。数学的整合性を備えた理論が実験で確認されず、立場を弱めた前例はある。有力理論として検討されていた超対称性理論は、欧州大型ハドロン衝突型加速器の実験で予測された粒子が見つからなかったため、支持基盤が縮小した。隠れた次元理論も、観測可能な信号が確認されて初めて成立の可否が判断される。

国内の検証基盤は整っている。江原道旌善の予美山地下1000メートルに位置するイェミラボ(Yemilab)は、2022年に竣工した大規模地下実験施設だ。鉄鉱山の坑道を活用して建設され、エレベーターで垂直に600メートル下った後、さらに斜坑を800メートル近く進んでようやく実験室に到達する。面積基準では世界6位級の規模である。

地下実験研究団はここで、検出性能を高めた次世代コサイン実験の準備を進めている。イェミラボでは、暗黒物質探索と並行してニュートリノの性質を解明するAMoRE実験も行われている。深部地下実験施設を自前で保有する国は世界でも少数だ。新理論が示した標的が、今後の実験設計に反映される可能性も指摘されている。

暗黒物質探索は派生技術の面でも注目される。微小信号を捉えるために開発された超高感度検出器、極低温冷却、低雑音電子装置、量子計測技術は、医療画像やコンピューティング、通信分野に応用されてきた。基礎物理実験が産業技術開発と結びついて進む構造である。

隠れた次元の存在の有無は、実験で判定されるべき問題だ。理論が探索対象を示し、実験がそれを検証する段階に入ったとの見方が出ている。