耳をふさがないイヤホンが主流になった理由、サムスン・シャオミまで参入した「オープン型」の正体

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By Global Team

耳をふさがないイヤホンが増えている。道を歩きながら車のクラクションを聞き、走りながら隣の人の声を聞き逃さない。「オープン型イヤホン」と呼ばれるこの製品群が、ワイヤレスオーディオ市場の一角を占めるようになった。

シャオミのクリップ型デザインが適用されたモデル(写真=シャオミ)
シャオミのクリップ型デザインが適用されたモデル(写真=シャオミ)

業界によると、サムスン電子は耳をふさがないオープン型のワイヤレスイヤーバッド「Galaxy Buds Able」を準備している。耳に掛けるクリップ型デザインが採用されたモデルだ。従来のカナル型イヤホンのように外耳道を塞ぐ方式ではなく、周囲の音を聞きながら音楽鑑賞や通話ができるよう設計されている。

シャオミも同市場への参入を予告した。同社は14日、初のクリップ型イヤホンの公式画像を公開した。サテンゴールドのカラーに高光沢ボディを採用し、透明な球体形状の音声出力部を備えていると伝えられている。業界では、シャオミが今月中に新製品を公開するとみている。

スマートフォン市場を左右する2大メーカーが並んで同じ製品群を準備しているという事実自体が、変化の兆しを示している。すでにファーウェイのFreeClip、Bose Ultra Open Earbuds、アンカーのSoundcore AeroClip、ソニーのLinkBuds Clipなど、似た形状の製品が相次いで発売されている。後発企業の参入は、この市場が「ニッチ」を超えたことを意味すると受け止められている。

耳をふさぐか、ふさがないか……小さな違いが生んだ大きな変化

オープン型イヤホンを理解するには、まず「カナル型」との違いを知る必要がある。私たちがよく使うワイヤレスイヤホンの大半はカナル型だ。耳の穴の内側、つまり外耳道にシリコンチップを差し込み、外部の音を遮断する構造だ。音漏れが少なく、外の騒音も遮断できるため、音楽に没入しやすい。

オープン型は正反対の発想から出発する。耳を完全にはふさがない。そのため、音楽を聴きながら車の音、案内放送、隣の人の声をそのまま聞くことができる。遮音性と没入感を重視してきた従来のイヤホンとは異なり、オープン型は「外の音も一緒に聞ける利便性」を前面に出す。

この小さな構造の違いが、使用環境を変えた。道路を走る人にとって、後方から近づく車の音は安全に直結する。自転車に乗る人や、通勤途中に歩く人も同じだ。耳をふさいだイヤホンは、こうした場面ではむしろ危険要因となる。オープン型がランニング、自転車、屋外活動の需要を急速に取り込んだ背景がここにある。

長時間装着時の負担が少ない点も大きい。シリコンチップを外耳道に押し込むカナル型は、長く着けていると耳が痛くなったり、圧迫感が出たりする。外耳道に湿気がこもって炎症につながることもある。耳をふさがないオープン型は、こうした圧迫や衛生面の負担から比較的自由だ。

骨伝導の時代は終わり、、「空気伝導クリップ型」が主導権

オープン型の中でも世代交代が進んでいる。しばらくの間、オープン型の代表的存在だったのは「骨伝導」方式だった。骨伝導は鼓膜を通さず、頭蓋骨の振動で音を伝える技術だ。マラソン選手やスポーツ愛好家の間で認知度を高めてきた。

しかし骨伝導には明確な弱点があった。音質が劣り、音量を上げると機器の振動が気になるという指摘が絶えなかった。

最近、市場拡大をけん引しているのは骨伝導ではなく、「空気伝導ベースのクリップ型」だ。空気伝導は一般的なイヤホンのように空気を通じて音を伝える方式だが、スピーカーを耳の入口付近に置くのが特徴だ。

Shokz OpenDot One(写真=Shokz Korea)
Shokz OpenDot One(写真=Shokz Korea)

クリップ型は洗濯ばさみのように耳介に軽く挟んで装着する形だ。耳の中に入れずに済み、音質の損失や振動の問題を抑えられる。耳への圧迫が少なく、外耳道の衛生面の負担も小さい。

骨伝導の「耳をふさがない」という利点はそのままに、欠点を減らした形といえる。サムスンとシャオミがそろってクリップ型を選んだのも、こうした流れと無関係ではない。

市場規模もこれを裏付ける。市場調査会社データインテロとインテルマークリサーチなどによると、世界のオープン型ヘッドホン・イヤホン市場は昨年の約38億ドル規模から、今年は約42億ドルへ成長する見通しだ。日本円で6兆円を超える規模である。スマートフォンメーカーが自社端末との連携を武器に参入すれば、競争はいっそう激しくなるとみられる。

耳をふさがないからといって、聴力が安全とは限らない

ここで消費者が押さえておくべき点がある。「耳をふさがない」という説明が、そのまま「聴力に安全」という意味だと受け取られやすいことだ。

実際、骨伝導イヤホンについて聴力保護に良いという広告も少なくない。しかし専門家は、そうした説明には科学的根拠が乏しいとみている。

聴力の損傷は「耳をふさぐかどうか」ではなく、「どれだけ大きな音を、どれだけ長く聞くか」に左右される。世界保健機関(WHO)は、イヤホン使用時は最大音量の60%以下で、1日60分以内にとどめるよう勧告している。85デシベル以上の騒音に長時間さらされると聴力は損なわれる可能性があり、一度壊れた聴覚細胞は元に戻らない。

オープン型はむしろこの点で落とし穴がある。外の音がそのまま入ってくる構造のため、地下鉄や繁華街のような騒がしい場所では音楽が聞こえにくい。すると自然に音量を上げてしまう。

周囲の騒音にかき消されないよう音を上げた瞬間、聴力への負担はカナル型より大きくなることもある。オープン型の利点が、使用環境によっては弱点に反転するわけだ。

結局のところ、製品の形状だけで安心するわけにはいかない。騒がしい環境では無理に音量を上げるより、いったん音楽を止めるほうがよい。静かな場所で適切な音量で聴く習慣こそ、どのイヤホンを使う場合でも最も確実な聴力保護法だ。

何を買うべきか……用途から決めよ

選択肢が広がった今、「自分に合う製品」を選ぶことが重要になった。基準はシンプルだ。どこで、何をしながら使うかを先に決めることである。

静かなオフィスや自宅で音楽に深く浸りたいなら、遮音性に優れたカナル型が依然として有利だ。一方、屋外での活動が多い、あるいは安全のため周囲の音を逃したくないなら、オープン型が適している。

同じオープン型でも、眼鏡をよくかける人は耳の後ろで支える骨伝導・イヤーフック型より、クリップ型のほうが快適な場合がある。厚手の冬服を着るときに後ろの支えが邪魔になるという利用者の声も参考になる。

スマートフォンメーカーが作る製品は、自社端末との連携がスムーズという利点がある。ただし、その利便性が特定ブランドのエコシステムに縛られる結果につながる点も併せて考えるべきだ。どんなイヤホンでも、結局は「機能一覧」ではなく「自分の生活パターン」に合わせて選ぶほうが後悔は少ない。

サムスンとシャオミの参入は、オープン型イヤホンをより身近で手頃なものにする可能性が高い。競争が激しくなるほど、消費者の選択肢は広がる。しかし製品が増えるほど、「何が良いか」よりも「自分に何が合うか」を問うことが、いっそう重要になる。耳をふさぐか、ふさがないかにかかわらず、決めるのはあくまで使う人だ。

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