米国と欧州が税をめぐって再び対立している。火種は「デジタル税」だ。ドナルド・トランプ米大統領が、米IT企業に課税する国に対し100%関税を課すとカードを切った。
トランプ大統領は26日(現地時間)、SNSのトゥルースソーシャルに投稿し、「米国企業にデジタル税を課すすべての国は、米国に入るすべての商品に直ちに100%の関税を受けることになる」と述べた。
注目すべき点は別にある。すでに結ばれた貿易合意も例外ではないという点だ。トランプ大統領は「協定が履行中であろうと署名済みであろうと、この関税が優先する」と明言した。
デジタル税を知らない読者も多いだろう。簡単にいえばこうだ。グーグル、アップル、メタ、アマゾンのようなビッグテックは世界中で収益を上げている。一方で、オフィスや工場のような物理的拠点は大半を本国に置いている。
法人税は通常、事業所がある場所に納める。そのため、売上が大きく発生した国でも税金はほとんど支払われない。売上が生じた場所と納税する場所がずれる構造だ。
韓国が経験した事例が代表的だ。ネットフリックスコリアは2020年に4,155億ウォンを稼いだが、その年に納めた法人税は22億ウォンにとどまった。
欧州各国はこの抜け穴を埋めようとした。売上に直接課税する方式だ。フランスが2019年に税率3%で先陣を切り、英国は2020年に2%を導入した。イタリア、スペイン、トルコも同様の制度を取り入れた。標的が米ビッグテックに集中したことから、「グーグル税」「GAFA税」というあだ名が付いた。
米国が黙っているはずがなかった。
本来の解決策は別にあった。経済協力開発機構(OECD)と主要20か国・地域(G20)が作った国際協調の枠組みだ。二つの柱で構成される。ひとつは、売上が生じた国に課税権を分配する「ピラー1」、もうひとつは、どこで事業をしていても最低15%は課税する「ピラー2」だ。
ピラー1が機能すれば、各国の個別デジタル税は廃止することになっていた。多国間合意で対立を解消しようという構想だった。
だが枠組みは揺らいだ。トランプ大統領の就任初年にあたる2025年、米国が交渉から手を引いたのだ。米議会は、自国ビッグテックが標的になる構造に一貫して反対してきた。
多国間合意が止まると、各国は独自のデジタル税に戻った。米国は関税で対抗した。こうして「各自で生き残る」構図が固まった。
流れは国によって分かれた。カナダは昨年、デジタル税を進めようとしたが、米国の圧力で撤回した。英国も自国のデジタル税を引き下げる案を検討していると伝えられる。一方、フランスは譲らなかった。エマニュエル・マクロン大統領は先週の主要7か国(G7)首脳会議で、デジタル税を撤回しないと明言した。
欧州連合(EU)も反発した。オロフ・ギル欧州委員会報道官は「合法的な政策に対する一方的な貿易報復は正当化できない」と述べた。そのうえで、「規制の自律性を守るため、迅速かつ断固と対応する」とした。
背景には昨年結ばれた約束がある。米国とEUは物品関税を15%に抑える貿易合意を締結し、欧州議会は今月、その履行法案を承認した。双方は7月4日の履行開始を前にしている。デジタル税はこの合意から外れていた。トランプ大統領の今回の脅しが合意を揺るがすとの懸念が出る理由だ。
韓国は今回の標的から一歩外れている。独自のデジタル税を持っていないためだ。これまでOECDの多国間枠組みの中でのみ動いてきた。米国が直ちにデジタル税を理由に韓国へ100%関税を課す名分は乏しい。
問題はその先だ。ピラー1が施行されれば、サムスン電子とSKハイニックスが課税対象に含まれる。連結売上高が200億ユーロ、韓国ウォンで約27兆ウォンを超え、利益率が10%を上回るグローバル企業が基準であり、両社はこれに該当する。
韓国としては、グーグルやネットフリックスのような巨大IT企業への課税権を新たに確保できる利点がある。同時に、サムスンやSKが海外に納める税負担も増える可能性がある。
政府も対応に乗り出した。企画財政部は今年初め、グローバル最低課税制度を見直す方針を確定した。他国に流れる税金を国内で先に徴収し、税源を守る狙いだ。
より大きな変数は通商環境だ。韓国経済は米国向け輸出への依存度が高い。6月に入って輸出はAI半導体需要に支えられ、急増している。この流れの中で米国と欧州の関税戦争が広がれば、どこに飛び火するか見通しにくい。専門家は、報復関税が拡大すれば企業の輸出負担が増し、消費者物価を押し上げる恐れがあると警告する。
もっとも、市場は比較的冷静だ。トランプ大統領の脅しが実際に履行されるか疑問が残るためだ。米連邦最高裁は今年、トランプ政権の相互関税に制約を加えた。どの法的根拠で100%関税を課すのかも、まだ明確ではない。一部海外メディアが今回の脅しを「歯の抜けた脅し」にたとえたのはそのためだ。
結局、本質は一つに集約される。「価値が生まれた場所で税を納める」という原則と、「自国のビッグテックを守る」という利害が正面からぶつかっているのだ。行き詰まりを解くには、止まった多国間交渉が再び動き出す必要があるとの見方が出ている。
韓国としては、どちらか一方に巻き込まれるのではなく、多国間交渉の枠組みの中で税源と輸出という二兎をどう守るかが課題とみられる。デジタル時代の新たな税秩序がどこへ向かうのか、その分岐点が近づいている。