iPhone Duo画面に亀裂、誰がどこまで作ったのか…パネル・ガラス・ヒンジのサプライチェーンを徹底分析

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By Global Team

▶ iPhone Duoの内側ディスプレイは、1社だけで完成する製品ではない。折りたたみ式OLEDパネルはサムスンディスプレイが供給するとされるが、その上下には高強度ガラスやポリマー保護層、接着剤、支持板が組み合わされている。

▶ ヒンジは100を超える部品で構成され、カバーにはリサイクルチタンを使った3Dプリント技術が採用された。ヒンジの組み立てには、米アンフェノールと台湾の新日興が参加したとされる。

▶ Appleは初の折りたたみスマートフォンに、韓国・米国・台湾・中国企業が参加するサプライチェーンを構築した。発売直後に報告された画面の破損と、特定の部品や製造工程との関連は明らかになっていない。

iPhone Duoの内側ディスプレイで、折り目に沿って明るい線が現れた様子。(写真:Xより)
iPhone Duoの内側ディスプレイで、折り目に沿って明るい線が現れた様子。(写真:Xより)

iPhone Duoの内側ディスプレイが、折り目に沿って割れたとの報告が、23日の発売直後から相次いでいる。Appleは原因や不良率を明らかにしていない。その間、オンラインでは「画面を作ったのはサムスンではないのか」という疑問が出ている。

iPhone Duoの折りたたみ画面には、サムスンディスプレイが供給するとされるOLEDパネルが搭載されている。ただし、パネルがそのまま画面全体を意味するわけではない。上下にはガラスや保護層が組み合わされ、下部では支持構造が画面を支える。折りたたんだり開いたりするヒンジも、別途設計・製造される。

つまり、1枚の画面を完成させるには複数の企業が関わる。サムスンディスプレイはどこまでを製造し、Appleは何を設計したのか。公開された技術資料やサプライチェーンに関する報道をもとに、製造の仕組みを見ていく。

◆ 画面は1枚ではなく、複数の層で構成

iPhone Duoの内側ディスプレイ中央に黒い線と明るい横線が現れた様子。(写真:Xより)
iPhone Duoの内側ディスプレイ中央に黒い線と明るい横線が現れた様子。(写真:Xより)

折りたたみスマートフォンの内側画面は、発光するOLEDパネル1枚だけでできているわけではない。パネルの下には折りたたむ際に画面を支える構造があり、上には指が触れる表面を保護する層が重ねられている。

Appleが公開したiPhone Duoの内側画面は、折りたたみ式OLEDパネルの上下に高強度ガラスを配置した構造だ。各層の間には、画面を曲げる際に生じる力を分散させるため、専用の接着剤を使用している。表面にはポリマー保護層と耐傷コーティングを施した。

Appleによると、ポリマー素材の剛性は業界で使われている他の素材より最大40%高い。画面表面にはナノテクスチャ加工を施し、折り目を目立ちにくくした。画面の下には、構造を補強するチタン製の支持板も組み込まれている。

このうち中核となる折りたたみ式OLEDパネルの供給元には、サムスンディスプレイが挙げられている。海外メディアのPhoneArenaなどは、Appleがサムスンディスプレイと複数年の供給契約を結び、パネル価格は1枚あたり約250ドルだと報じた。ただし、契約期間や単価はAppleもサムスンディスプレイも公表していない。

Appleは供給元の社名ではなく、ディスプレイの開発方法について説明している。Appleのハードウェアエンジニアリング担当副社長、リッチ・ディーン氏と、iPhoneのディスプレイ技術担当であるJP・ギユー氏は14日、YouTuberのマイケル・フィッシャー氏とのインタビューで、既存部品をそのまま使うわけではないと明らかにした。

ギユー氏は、Appleが開発に着手するまでは、供給元にもそのディスプレイは存在しなかったと説明した。ディーン副社長は、ナノメートル単位まで仕様を合わせて製造すると語った。

サムスンディスプレイがOLEDパネルを製造し、Appleが製品に必要な構造や性能を定め、供給元と共同開発する仕組みだ。パネル製造と完成品の設計が分かれている。

ガラスのサプライチェーンも別に形成されている。中国の経済メディア「第一財経」は、市場調査会社シノリサーチ関係者の話として、レンズテクノロジーがiPhone Duo向け超薄型ガラスの主要供給元だと報じた。レンズテクノロジーとBIEL Crystalは、折りたたみ画面向けガラスカバーの供給元としても名前が挙がっている。

超薄型ガラスは、薄く加工して曲げられるようにしたガラスだ。OLEDパネルを保護しながら、繰り返し折りたたむ動作に耐える役割を担う。ただしAppleは、個々のガラス層の製造元や供給比率を公表していない。

◆ 画面破損の原因として注目されるヒンジ

iPhone Duoの内側画面の折り目付近に、黒い損傷痕と画面の異常が見られる様子。(写真:Xより)
iPhone Duoの内側画面の折り目付近に、黒い損傷痕と画面の異常が見られる様子。(写真:Xより)

iPhone Duoの画面破損の原因として、ヒンジ構造が注目されている。一部の購入者が、画面が割れる前に折り目の部分で引っかかる感触があったと主張しているためだ。ヒンジは画面の開閉を制御し、内側ディスプレイを支える重要部品である。

ヒンジは100を超える部品で構成されている。Appleはリサイクルチタンを使った3Dプリント技術でヒンジカバーを製造した。精密な部品同士がかみ合って動く構造のため、組み立て精度が重要となる。

ヒンジは画面を開閉する蝶番だが、その役割はそれだけではない。折りたたむ際に画面が過度に曲がらないよう動きを制御し、開いた状態では中央部分を支える。狭い空間に複数の部品を精密に組み合わせる必要がある構造だ。

Appleのハードウェアエンジニアリング担当副社長、トム・マリーブ氏は9月のインタビューで、約5年間の日常使用を想定した状況を再現する加速試験を行ったと説明した。Appleはサムスン電子やGoogleとは異なり、開閉回数に関する公式の耐久性数値を公表していない。

ヒンジの生産は初期から難航した。当初は米アンフェノールがヒンジ組み立ての主要供給元だったが、生産歩留まりが期待に届かず、台湾の新日興が主要供給元になったとされる。新日興も当初はAppleの品質基準を満たすのに苦労した。当時、基準を通過した部品を選別してフォックスコンに供給したとされる。

ヒンジを構成する細かな部品には、中国企業も参加している。中国の経済メディア「第一財経」はシノリサーチの分析を引用し、イオンテックがヒンジの回転軸関連部品を、江蘇ジャイアンテックが金属粉末射出成形による精密部品を供給すると伝えた。

金属粉末射出成形は、金属粉末を金型に入れて小型で複雑な部品を作る技術だ。ヒンジのように、小さな部品がかみ合って動く構造に利用される。

ヒンジの素材としては、リキッドメタルも取り沙汰された。TFインターナショナルのアナリスト、郭明錤氏は昨年3月、Appleが折りたたみスマートフォンの主要部品にアモルファス合金を採用するとの見通しを示した。Appleが2010年に独占契約を結び、iPhoneのSIMトレイピンなどに使用してきた素材だ。

しかし、中国メディアの界面新聞は、Appleが一部のヒンジ部品でリキッドメタルを試したものの、量産前に適用方法を再検討したと報じた。最終製品にこの素材がどの範囲で使われたかは公表されていない。

最終組み立てはフォックスコンが担当する。9月時点の組み立て歩留まりは、60%を少し上回る水準だったとされる。サプライチェーン関係者の間では、Appleの品質基準を維持しながら生産歩留まりを安定させるには、さらに6カ月から1年かかる可能性があるとの見方も出ていた。

◆ Fold8は問題なし

2019年の初代Galaxy Foldから2023年のGalaxy Z Fold5まで、サムスン電子製折りたたみスマートフォンの世代ごとのデザインと重量の変化。(写真:サムスン電子)
2019年の初代Galaxy Foldから2023年のGalaxy Z Fold5まで、サムスン電子製折りたたみスマートフォンの世代ごとのデザインと重量の変化。(写真:サムスン電子)

サムスン電子とAppleでは、折りたたみスマートフォンの開発経験に差がある。

サムスン電子は2019年の初代Galaxy Foldから今年のGalaxy Z Fold8まで、8世代の製品を発売した。サムスンディスプレイが折りたたみ式OLEDパネルを開発・製造し、サムスン電子がヒンジを含む完成品の構造を設計する。ヒンジ関連部品はKHバーテックなどの外部協力会社が供給してきた。

サムスン電子も初代で画面破損の問題を経験した。2019年、レビュー用Galaxy Foldで保護層を剥がしたり、ヒンジ周辺の隙間から異物が入り込んだりして、画面が損傷する事例が相次いだ。

サムスン電子は発売を延期し、画面の保護層を縁の内側まで広げた。ヒンジ両端にも保護構造を追加したうえで、同年9月に製品を発売した。

その後、世代を重ねるごとにヒンジと画面の構造を改良してきた。

iPhone Duoに砂やほこりをかけ、ヒンジの動作を試験する様子。(写真:JerryRigEverythingのYouTube動画より)
iPhone Duoに砂やほこりをかけ、ヒンジの動作を試験する様子。(写真:JerryRigEverythingのYouTube動画より)
サムスン電子のGalaxy Z Fold8を通常とは逆方向に曲げて耐久性を試す様子。この試験では本体が曲がったものの、内側画面は正常に動作した。(写真:JerryRigEverythingのYouTube動画より)
サムスン電子のGalaxy Z Fold8を通常とは逆方向に曲げて耐久性を試す様子。この試験では本体が曲がったものの、内側画面は正常に動作した。(写真:JerryRigEverythingのYouTube動画より)

チャンネル登録者約1,020万人のIT系YouTubeチャンネル「JerryRigEverything」が行った耐久試験でも違いが表れた。iPhone Duoは砂やほこりにさらされた後、完全に閉じなくなった。逆方向に曲げる試験では内側画面に緑色の線が現れ、その後タッチ機能も作動しなくなった。

一方、Galaxy Z Fold8は同種の逆方向に曲げる試験で本体が曲がったものの、内側画面は正常に動作した。試験を行ったザック・ネルソン氏は、複数世代にわたり試験してきたサムスン製折りたたみスマートフォンの耐久性を高く評価した。

Appleは初の折りたたみスマートフォンに、サムスンディスプレイのOLEDパネルと外部企業のガラス・ヒンジ部品を組み合わせた。Appleが製品の仕様と構造を設計し、各供給元が部品を製造、フォックスコンが最終組み立てを担う仕組みだ。

サムスン電子も外部協力会社を活用している点で、基本的な生産構造は似ている。異なるのは、サムスン電子が複数世代にわたって折りたたみスマートフォンを開発・量産してきた経験を持つことだ。

◆ 判明していること、いないこと

23日以降に報告されたiPhone Duoの破損事例は、内側画面の折り目付近に集中している。一部の製品では、ひび割れとともに画面に明るいピクセルの線が現れた。

オーストラリアの購入者は、製品を開いた際にヒンジ付近で引っかかる感触があり、その後画面が割れたと主張した。この製品はApple Storeで新品に交換された。

Appleの公式修理マニュアルには、ヒンジの異常を点検する手順と、内側ディスプレイ一式の交換方法が含まれている。ヒンジの動作不良はソフトウェアでは解決できず、点検結果によっては部品交換が必要になる場合がある。

一方で、繰り返し折りたたむ試験を行っても破損しなかった製品もある。ウォール・ストリート・ジャーナルのジョアンナ・スターン記者は、機械を使ってiPhone Duo 1台を4日間で3万2,000回以上、繰り返し開閉した。試験後もヒンジは正常に動作した。ただし、画面を完全に閉じない方法で行われた試験だった。

これまでに公開されたサプライチェーン資料を総合すると、サムスンディスプレイはOLEDパネル、レンズテクノロジーなどはガラス、アンフェノールと新日興はヒンジの組み立て、中国の部品メーカーはヒンジの精密部品、フォックスコンは最終組み立てを担当しているとみられる。

Appleは各部品の仕様と完成品の構造を設計し、供給元各社と開発を進めた。

しかし、これらのうちどの部品が発売直後に報告された画面破損に影響したのかは明らかになっていない。9月の生産過程で指摘された歩留まりの問題と、実際の破損との関連も確認されていない。

Appleは破損の原因や不良率を公表しておらず、特定の供給元の製造上の欠陥を認めた事実もない。