イーロン・マスクのAI企業スペースXAIが12日(現地時間)、新たなAIモデル「Grok 4.6」を公開した。スペースXAIは、宇宙企業スペースXが今年2月にマスクのAI企業xAIを買収して設立した組織で、チャットボットブランドのGrokはそのまま維持している。
新モデルの焦点は、長時間にわたって作業を続ける能力だ。スペースXAIは、Grok 4.6が資料調査や情報分析、コード作業、アプリケーション制作のように複数の段階を経る複雑な作業を最後まで遂行できるよう設計されたと説明した。
◆ 質問に答えるAIから、仕事を任せるAIへ
Grok 4.6が狙う市場はエージェントAIだ。質問に対して1つの答えを返す従来のチャットボットとは異なり、目標を与えると計画を立て、ツールを使い、途中結果を確認しながら、人の介入なしに作業を継続する方式を指す。
スペースXAIは、長い作業の中でGrok 4.6が自ら検証する行動を見せたと説明した。次の段階に進む前に、自分が行った作業を試し、確認する方式だ。製品アイデアを与えると、未知の分野を調査して構造を組み立て、核心機能を実装して動作する初期版を出す作業に強いとも紹介した。

記憶容量も拡大した。Grok 4.6は50万トークン分を一度に扱える。トークンはAIが文章を処理する最小単位で、50万トークンは長編小説数冊に相当する分量だ。分厚い契約書の束や大規模プログラムのコード全体を丸ごと読ませて作業させることができるという意味だ。
価格は前作と同じ水準に据え置いた。API基準で入力トークン100万個あたり2ドル、出力100万個あたり6ドルだ。性能を引き上げながら価格を固定し、価格対性能で勝負する戦略とみられる。公開後1週間は、自社開発ツールで基本使用量を2倍にする販促も併せて実施する。
◆ 成績表を読み解くと、文書は1位・コーディングは劣勢
AIモデルの性能はベンチマークという標準試験で比較される。複数科目の試験を受けて平均を出す模擬試験に近い。
総合指標であるArtificial Analysisの知能指数で、Grok 4.6は61点を獲得した。前作Grok 4.5より5点上昇し、OpenAIのGPT-5.6最上位版と同点だ。ベンチャービートによると、トップ層はAnthropicが維持している。Claude Opus 5が1位、Claude Sonnet 5が62点で2位で、Grok 4.6はGPT-5.6とともに同率3位圏に入った。

科目別の差は大きい。実務文書作成と知識労働を評価する試験では、Grok 4.6が比較対象の中で1位を記録した。一方、実際のソフトウェアのバグ修正を測る実戦コーディング評価では65.9%で、GPT-5.6の73%、Claude Sonnet 5の70%に及ばなかった。ターミナル環境での作業評価でも、競合モデルの3分の2水準にとどまった。
報告書の整理や事務作業には強いが、難度の高いコーディング実務には相対的に弱いということだ。用途に応じてモデルを使い分ける時代になったという評価が出る所以でもある。
◆ 数週間後に4.7を予告、スピード戦の光と影
マスクは後継版の公開時期もすでに示した。ロイターなど複数の海外メディアによると、マスクはGrok 4.6の公開から数週間後にGrok 4.7を投入すると予告した。Grok 4.7は2兆1,000億個規模のパラメータになるとの見方も出ている。パラメータとはAIの“脳”の中の調整装置の数で、多いほど一般的により複雑な判断が可能になる。
計画通りなら、真夏に大型モデル2つを相次いで投入するスピード勝負となる。スペースXAIが米メンフィスに建設している超大型GPUクラスター「コロッサス」の増設が、このスピード戦を支える基盤として挙げられている。
一方で、迅速な公開サイクルには懸念もある。AI安全研究者の間では、公開の速度が検証の速度を上回る可能性があるとの指摘が出ていると海外メディアは伝えた。過去にGrokチャットボットが不適切な回答で物議を醸した経緯があるため、企業顧客の獲得には性能だけでなく信頼管理が重要になるとの分析もある。
利用者の立場では、モデル競争の激化は選択肢の拡大につながる。上位モデル同士のスコア差が1〜2点に縮まる中、価格と用途ごとの強みが選択基準として浮上している。文書業務が多ければGrok、コーディング実務が多ければ別のモデルを選ぶといった具合だ。AIエージェントに仕事を任せる企業であれば、成果物を検証する手順を併せて整えるべきだという助言も続く。
Grok 4.7が予告通り登場すれば、夏のAI競争の次のラウンドが始まる。点数競争を超え、どれだけ長く、どれだけ信頼できる形で働けるかが勝負の分かれ目になりつつある。
