顔にかけるコンピューターと呼ばれてきたスマートグラスの価格の壁が急速に下がっている。メタは23日(現地時間)、299ドル、韓国ウォンで約46万ウォンの人工知能(AI)グラスを発表した。昨年、110万ウォン台で登場したディスプレイ搭載モデルと比べると、半額にも届かない価格だ。
新製品の名前は「メタグラス」。メタが眼鏡メーカーのエシロールルックスオティカと手を組んで投入した。形は3種類ある。端正な四角形の「アドベンチャラー」、厚みのあるフレームが目を引く「キュリー」、そして放送人カイリー・ジェナーと共同でデザインした細い楕円形モデル「スターファイア」だ。米国、カナダ、英国、フランス、ドイツなどで同日販売が始まった。
スマートグラスは見た目には普通の眼鏡とほとんど変わらない。ただし、フレームの内側に小さなカメラとスピーカー、音声でやり取りするAIアシスタントが隠れている。かけたまま「今見えているものは何か」と尋ねれば答えてくれる。外国語の看板を読み上げ、手を使わずに写真や動画を撮ることもできる。
今回の製品には音楽再生、予定管理、道案内機能が盛り込まれた。リアルタイム通訳には韓国語が新たに追加され、日本語、中国語を含む14言語が一度に搭載された。AIは同社が新たに開発した「ミューズ・スパーク」が動かす。
値下げの狙いは明確だ。より多くの人の顔に眼鏡を載せることだ。あわせて販売するレイバン・メタ第2世代は379ドル、約52万ウォンから。オークリー製品は499ドルまで上がる。同じ性能を備えながら、有名眼鏡ブランドの名前代を外した結果が299ドルというわけだ。
マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、眼鏡を「個人向け超知能」への入り口と見ている。ポケットの中のスマートフォンに代わる次世代端末という計算だ。メタが今年AIに投じる資金は1450億ドルに達する。巨額投資を実際の収益につなげられることを示さなければならない立場にある。
眼鏡を手がけるリアリティ・ラボ部門は、今年第1四半期だけで40億ドルの赤字を出した。それでも、眼鏡は着実に売れている数少ない製品とされる。さらに価格を下げて市場を広げようとする理由はここにある。
最も目立つ変化はブランドだ。これまでメタの眼鏡には必ずレイバンかオークリーの名前が付いていた。新製品はそうした看板を外し、「メタ」だけを冠した。製造はエシロールルックスオティカが担当するが、価格、販売、製品イメージはメタが直接握る。
この戦略には両面がある。安価な自社製品が既存のレイバン眼鏡の売上を食う可能性がある一方、初めての購入者を呼び込み、市場そのものを広げる可能性も大きい。どちらの効果が強いかが、両社の算盤を分ける。
市場はまだ小さいが、メタの独走は鮮明だ。市場調査会社IDCによると、昨年の世界のスマートグラス出荷台数は960万台だった。そのうちメタのシェアは約76%で、事実上市場を一手に引っ張っている。
成長スピードも速い。今年第1四半期の出荷台数は、前年同期比167%増となった。急拡大する市場に対し、競争相手たちも動き始めている。
グーグルは眼鏡ブランドと手を組み、自社製品を準備している。サムスンも似たような端末を開発中だ。アップルもスマートグラスの検討に入ったとの見方が出ている。知名度と技術力を備えた巨大企業が相次いで参入する構図だ。
1週間前には、スナップチャットを生んだスナップが拡張現実(AR)グラスを発表した。価格は2195ドル、約300万ウォンに達する。スナップ製品が目の前にデジタル画面を重ねて表示するのに対し、メタのグラスは文字表示とAIとの対話に重きを置く。同じ眼鏡でも、目指す方向は違う。
課題も残る。盗撮をめぐる議論が代表的だ。メタのグラスは撮影中にライトが点灯するようにしているが、それを隠そうとする動きとの攻防は簡単には終わらなさそうだ。
結局のところ、鍵は価格ではなく使い道だ。手元の携帯電話を差し置いて、なぜあえて眼鏡をかける必要があるのか、その理由を作れるかに市場の大きさがかかっている。価格のハードルを先に下げたメタの今回の選択が、その答えを早められるかどうかが次の試金石となる。