[経済eの知識] キャズム、順調だった産業が突然止まる理由

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By Global Team

キャズム(Chasm)は、革新技術が初期市場を超えて大衆市場へ広がる過程で直面する需要の停滞区間を指す。市場では、新技術産業の成否を左右する決定的な分岐点とみなされている。

キャズムは、米国の経営コンサルタント、ジェフリー・ムーアが1991年に出版した著書『Crossing the Chasm(キャズムを越えて)』で広く知られるようになった。英単語自体は「深い裂け目」や「峡谷」を意味する。技術産業では、初期の革新受容層と大衆消費者の間に存在するギャップを説明する概念として用いられる。

新技術は通常、△革新受容者 △初期受容者 △前期多数層 △後期多数層 △遅滞受容層 の順に普及する。初期の消費者は、新しい技術そのものに強い関心を持つ。

一方、大衆消費者は価格、安定性、実用性を優先して考える。キャズムとは、初期需要が一巡した後、大衆消費者の獲得に失敗し、成長が急激に鈍化する時期を指す。

代表的な事例として、電気自動車市場がよく挙げられる。世界各国の自動車メーカーは、環境政策と技術発展を背景に電気自動車の生産を拡大した。

初期市場では急速な成長を見せたが、充電インフラの不足、高価格、バッテリー火災への懸念などが続き、一部の国では販売増加率が鈍化した。業界では、これを電気自動車のキャズムと解釈した。

メタバース産業も同様の流れをたどった。新型コロナウイルス感染拡大期に非対面産業が広がり、市場の期待は高まったが、実際の消費者利用度や収益モデルの確立には限界を見せた。仮想現実機器の普及ペースが遅く、コンテンツの競争力も不足しているという評価も出た。投資熱が急速に冷え込み、キャズムへの懸念が広がった。

最近では、生成型人工知能(AI)産業でもキャズムの可能性が取り沙汰されている。チャットボットやAI検索サービスの利用者は急増しているものの、企業の収益性や長期需要の検証はなお進行中だという分析がある。AI半導体やデータセンターへの投資規模が拡大する中、それが実際の市場収益につながるかどうかが核心の変数とされる。

企業はキャズムを乗り越えるため、価格引き下げとサービス改善に注力している。製品の完成度を高め、消費者が実感できる実質的な効用を確保する戦略も強化している。産業エコシステムの構築も重要な要素と評価されている。電気自動車市場では、充電網の拡大が代表的な事例だ。

投資市場では、キャズムを一時的な調整と見る向きもある。初期の過熱の後、市場が現実的な需要構造へと再編される過程という意味だ。一方で、技術競争力が不足していたり、市場性が検証されていなかったりする産業は、キャズムの局面で脱落することもある。

キャズムは、技術発展そのものよりも市場の拡散速度を説明する用語に近い。革新技術が実際の消費と産業構造の変化へとつながるかどうかを判断する基準として活用される。

成長産業ほど、キャズムを乗り越えられるかどうかが企業価値と市場での生存を左右する変数として作用する。