サムスンが金融脆弱層と零細自営業者を支援するため、サムスン美笑金融財団に総額2000億ウォンを出資する。サムスン電子が1500億ウォン、財団を共同運営するサムスン生命保険、サムスン火災、サムスンカード、サムスン証券などの金融関連会社が500億ウォンを共同出資する。
この財源は、金融脆弱層と零細自営業者の事業運営資金、創業資金、緊急生計資金の融資に活用される。担保・保証人なしで年4.5%以下の金利で借りられる仕組みで、約4万人が恩恵を受ける見通しだ。単純計算では、1人当たり平均500万ウォン規模となる。
包摂金融とは、庶民や脆弱層の金融アクセスを高め、高金利負担を軽減する金融支援の方式だ。債務調整によって延滞者の経済的再起を助ける概念まで含まれる。美笑金融の支援対象は、信用が低いか所得が少なく、銀行など制度金融の利用が難しい層や零細自営業者だ。
今回の出資は、今年5月のサムスン電子労使の賃金・団体協約妥結直後に出された約束の後続措置だ。当時、役員陣は賃金交渉の過程で国民と株主、顧客に心配をかけたことを謝罪し、「サムスンの成長と成果が社員だけでなく、われわれ社会にも好循環となるよう社会的責任もさらに強化する」と明らかにしていた。
◆ 消費刺激から自立支援へと重心移動
最初の事業とは性格が異なる。サムスン電子は6月8日から4週間、「国民とともに、サムスン電子感謝フェスティバル」を開催し、製品購入額の20%(軍人・警察・消防・矯正公務員などは30%)をオンヌリ商品券で還元した。当初見込まれた恩恵規模は約4000億ウォンだったが、参加が殺到し、実際の規模はこれを大きく上回る見通しだ。
還元手段としてオンヌリ商品券を選んだ点は、設計上の特徴として挙げられる。伝統市場や商店街で使われる商品券の特性上、消費が地域商圏へ流れるよう誘導する構造だという説明だ。
商品券還元が消費を刺激する一回性の支援であるなら、今回の包摂金融は性格が異なるという見方が出ている。融資財源は返済を経て、再び別の脆弱層へ流れる循環構造を持つ。支援の重心が目先の消費から長期的な自立へ移ったという評価が財界で提起されている。
受益対象も異なる。還元イベントがサムスン製品を購入する余力のある消費者を対象としたのに対し、今回の支援は制度金融の門を越えられない低信用・低所得層を狙う。5兆ウォンの社会貢献が、階層ごとに支援方式を変えながら設計されているとの分析が出ている。
◆ 美笑金融17年、高金利時代に再び大きくなった役割
サムスン美笑金融財団は2009年12月、サムスングループ6社の出資で設立された。美笑金融は、信用が低く銀行の敷居を越えにくい層に、自立資金を担保・保証人なしで貸し出す少額融資(マイクロクレジット)事業だ。サムスンは財団発足当時、10年間で3000億ウォンを出資する計画を立て、事業を続けてきた。
美笑金融は、企業と金融界がともに参加する官民協業体制だ。サムスンのほか、SK、現代自動車、LG、ポスコ、ロッテなど主要グループと5大銀行がそれぞれ財団を設け、庶民金融振興院の事業実施機関として融資を執行する。寄付金と休眠預金を財源に、金融の死角地帯を埋める構造として始まった。
無担保・無保証の融資は、不良リスクを財団が引き受ける構造だ。利益を出さなければならない市中銀行が担いにくい領域を、寄付金財源が補う形である。美笑金融が市場失敗の領域を補完する装置と評価される理由だ。
今回の追加2000億ウォン出資は、高金利の長期化と結びついているとの診断が出ている。低信用層は制度圏の融資が塞がれると、法定最高金利を上回る違法な闇金融に追い込まれやすい。年4.5%以下の資金供給は、この悪循環を断つ安全弁の役割を果たせるという見方がある。
政府政策とも連動する。現政権は包摂金融の強化を国政課題に掲げ、庶民金融商品の金利引き下げ、金融機関による自主的な債務調整の活性化、違法な闇金融の遮断を進めている。
金融委員会は包摂金融戦略推進団を立ち上げ、分科ごとの議論を動かしている。民間大企業の財源が政府の庶民金融体制に結合する構造という点で、今回の出資が政策補完材の役割を果たすとの見通しが出ている。
◆ 財源よりも伝達体制、持続性が成否を分ける
課題もある。美笑金融は発足初期、厳しい融資条件と運営未熟で実績不振を経験した前歴がある。サムスン美笑金融財団も設立初年に融資実行が低調だったため、出資金を前倒しで執行し、商品とサービスを手直ししたことがある。財源規模よりも、必要な人に資金が届く伝達体制が成否を分けるという教訓が残った。
無担保融資の特性上、延滞管理と事後支援も重要な課題とされる。資金を貸して終わりという方式では、自立という目標に到達しにくいという指摘がある。
実際に美笑金融の現場では、融資とともに提供される相談支援が返済成果を左右した事例が蓄積されてきた。創業教育や経営相談を融資とセットで提供する方式が、返済率と自立成果の両方を高めた事例として挙げられている。
サムスン関係者は「金融支援の拡大を通じて、脆弱層の経済的自立と安定した暮らしを力強く支えたい。今後も社会の取り残された隣人のための包摂金融の価値を継続して実践していく」と述べた。
執行の進み具合でみれば、まだ初期段階だ。感謝フェスティバルの約4000億ウォン規模の恩恵と、今回の2000億ウォン出資を合わせても、全体約束の1割前後にすぎない。残る4兆ウォン台の財源がどこへ向かうのかが、今後の注目点とされる。
サムスンの今後の動きにも関心が集まる。サムスンは5兆ウォンの社会貢献計画に基づき、協力会社エコシステムの強化と未来人材の育成など、追加支援策を順次打ち出す見通しだ。
労使対立から始まった約束が一過性のイベントで終わるのか、それとも持続可能な共生構造として定着するのかは、残る事業設計次第で決まるとみられる。大企業の社会貢献の基準点を改めて示す実験になるとの見方もある。