国内株式市場で、あまりなじみのない無線通信機器業種が連日強さを見せている。半年もたたないうちに株価が2倍になった銘柄が相次いでいる。ところが、これらの企業が何を作っているのか、なぜ注目されているのかはあまり知られていない。

◆ 無線通信機器株、通信網の骨格をつくる企業
無線通信機器とは、携帯電話の電波が行き来する道を敷く装置だ。通話や動画視聴の際、信号は各地に立てられた基地局を通る。基地局は携帯電話と通信網をつなぐ中継拠点だ。
基地局を構成する部品や装置を作る企業が、無線通信機器株として分類される。信号を送受信するアンテナ、雑音を取り除くフィルター、信号をより遠くまで送るため出力を高める電力部品が代表例だ。建物内通信をつなぐ中継装置、光で信号を運ぶ光部品もこの領域に含まれる。
これらの売上は、通信会社がネットワークにどれだけ資金を投じるかに左右される。通信会社が新しい基地局を設置すれば装置の発注が増え、投資を止めれば仕事は枯れる。業種株が通信投資サイクルに応じて揺れ動く構造的な理由だ。
◆ AI RAN、基地局に知能を入れる技術

最近、この業種を押し上げた鍵の言葉がAI RANだ。無線アクセスネットワーク(RAN)とは、基地局とアンテナで構成される通信網の最も外側の領域を指す。ここに人工知能を加えたものがAI RANだ。
従来の基地局は、あらかじめ決められたルール通りにしか信号を処理できなかった。AI RANはネットワークの状況を自ら読み取り、トラフィックを調整する。人が集中する時間帯に資源を自動で配分し、電力の無駄も減らす。つまり、通信網が一段と賢くなるわけだ。
エヌビディアがこの技術を次世代の成長軸と位置づけたことで、流れが大きくなった。人工知能の演算に使われるエヌビディアのグラフィックス処理装置(GPU)を基地局にも入れるという構想だ。
データセンターで稼いだ収益を通信網へ広げようとする戦略である。エヌビディアが市場を開けば、通信会社は新しい装置へ投資せざるを得ず、その恩恵が部品・装置企業へ流れるという期待が形成された。
◆ 3つの追い風が重なった
期待が株価に変わった背景には時期があった。性格の異なる好材料が同じタイミングで重なったのだ。
米連邦通信委員会(FCC)は2日(現地時間)、周波数競売を再開した。競売権限を取り戻してから初めてのことだ。最大800MHz規模の周波数が追加で放出される可能性がある。新たに周波数を確保した通信会社は、それに見合う装置を設置しなければならない。大規模設備投資の予告編といえる。
米国がファーウェイをはじめとする中国製通信機器を締め出す流れも、国内企業にはチャンスだ。中国製装置が抜けた空白を埋める供給先として韓国企業が挙がっている。ここにエヌビディア発のAI RANへの期待まで重なり、市場は新たな通信投資サイクルの出発点と受け止めた。
株価の反応は速かった。業種の代表銘柄は短期間で年初来70~140%急騰した。中には1日で20%超上昇したものもある。業種全体が沸き立った背景だ。
◆ 期待が実績になるには…投資家と産業の課題
ここで押さえるべき点がある。今の株価は実績ではなく、期待を先取りして織り込んだ値である。半年で2倍になった株価は、まだ稼いでいない利益を前借りした結果に近い。
解決策は、期待と実績を見分けて見ることだ。同じ通信機器株でも、米国市場に実際に納品できる可能性があるか、主力製品がAI RANの流れと結びついているかによって、恩恵の大きさは変わる。
証券業界が一律の買いではなく、銘柄ごとの選別を勧める理由がそこにある。通信会社が設備投資計画を本当に実行するのか、その資金が国内企業の売上として計上されるのかを確認することが、投資判断の基準となる。
産業側の課題も明確だ。周波数競売とAI RANは機会の扉を開いただけだ。その中へ入るには、価格ではなく技術でグローバル通信会社の選択を勝ち取らなければならない。中国製装置を代替できる品質と供給能力を備えているかが、今回のサイクルの成否を分ける。
通信網は、一度敷けば数年にわたって使う長期投資分野だ。今回の流れが一時的なテーマに終わるのか、実績に支えられた上昇として定着するのかは、結局のところ数字で証明される問題である。期待が現実に移り変わる速度、それが今後を左右する分岐点だ。