人工知能競争の焦点が性能から価格へ移りつつある。グーグルが新モデル「Gemini 3.7 Flash」を発表し、性能を引き上げながら利用料を半額に引き下げた。前作の3.6 Flashを公開してから3週間後に出た後継モデルだ。

Gemini 3.7 Flashは、コーディングとエージェント作業に重点を置いたモデルだ。エージェントとは、人が目標だけを与えれば複数段階の作業を自動で処理する人工知能を指す。資料を探し、文書を作成し、プログラムを修正する作業まで自らつなげて行う。
Flashは、グーグルのGemini製品群の中で速度と価格を重視した実用型ラインだ。最高性能モデルより軽量だが、安価なため実際のサービスで最も多く使われる。グーグルは今回のモデルを「最も賢い仕事用モデル」と紹介した。

何がどれほど良くなったのか
最大の改善点はコーディング能力だ。ソフトウェアの不具合を見つけて修正する能力を測る評価(DeepSWE)で65.3点を獲得した。前作は49.0点だった。実務レベルのコードを作る評価(FrontierCode)でも43.6点となり、前作の34.4点を上回った。

ホームページのようなウェブ画面を作る能力も向上した。利用者が2つのモデルの成果物を見比べ、より良い方を選ぶ方式でつける順位で、前作より50点高いスコアを記録した。図や設計の下書きを見せると、それをよく似た画面として再現する精度が高まったということだ。
金融や法律、生命科学のように専門知識を要する分野でもスコアが上がった。複雑な文書を読み内容を把握する評価では34.0点となり、前作の22.0点との差を広げた。実際の企業業務をどれほど処理できるかを測る評価でも17.0点から30.4点へと大幅に上昇した。まだ満点には遠いが、改善幅は大きい。
グーグルが公開した活用事例は、その変化を具体的に示している。文章で説明を入れるだけで、キャラクターやアイテムを即座に作って組み込む3Dゲームができあがった。指示ひとつで動くホームページのトップ画面を完成させた事例もある。数百ページの年次報告書を、図表が動くウェブ文書に変えるデモも披露された。
一度で狙い通りの結果を出す割合が高まった点も、開発現場では意味が大きい。人工知能が作ったコードに誤りがあれば、人が修正するよう再度指示しなければならない。この繰り返しが減れば、開発時間と利用料の両方を抑えられる。グーグルは新モデルが行き詰まった状況では自ら迂回路を探し、指示が曖昧なら問い返す方向に改善したと説明した。
半額勝負
今回の発表で注目されるのは価格だ。利用料は年末まで入力100万トークン当たり0.75ドル、出力100万トークン当たり3.75ドルとなる。前作の発売時価格から半額に引き下げた。トークンとは、人工知能が文章を読み書きする際に数える単位で、100万トークンは長編小説数冊分に相当する。
人工知能モデルの利用料はサービス原価に直結する。翻訳アプリであれ相談チャットボットであれ、AI機能を組み込んだサービスは利用者が使うたびにモデル企業へ使用料を支払う。モデル価格が半分になれば、同じ予算で2倍回せるか、サービス料金を引き下げる余地が生まれる。
自社モデルを持たない国内企業には追い風だ。良いモデルを安く借りられるほど、アイデアとサービス企画で勝負できる余地が広がる。逆にモデルを直接開発する企業には負担となる。性能と価格という2つの戦線で同時に競争しなければならない状況になった。

投入間隔も短くなっている。前作と今回のモデルの間隔はわずか3週間だった。開発者の意見を受けてすぐ次のモデルに反映するスピード戦が起きていることの裏づけだ。業界全体で見ると、モデル更新周期が四半期単位から週単位へと縮まっている流れだ。
AIモデルは多く使われるほど、改善の材料が蓄積される。開発者を自社陣営に先に取り込めば、そのサービスはそのモデルの上に定着する。一度載ったサービスは他のモデルへ移すのが面倒だ。目先の利益を減らしてでも利用基盤を広げる方が得だという判断だ。
利用者の日常はどう変わるのか

利用範囲は対象によって異なる。開発者はグーグルのAI開発ツールで公開当日から使える。企業はグーグルの法人向けAIサービスを通じて導入する。Geminiアプリでは、Pro・Ultraの契約者から適用が始まった。無料利用者は当面、前作の3.6 Flashをそのまま使う。
契約者向けには、個人秘書機能「Spark」がこの日から新モデルで動く。Sparkは、利用者が指示しておいた作業を24時間自動で進める機能だ。散らばったファイルを集めて整理し、メールの下書きを作成し、進行状況の文書を更新する。個別設定は不要で、160以上の国と地域で利用できる。
Googleドキュメントやスプレッドシートといった業務ツールを扱う能力が向上したことが、Spark改善の核心だ。複数のアプリを行き来して処理しなければならない仕事ほど、AIが途中でミスをする可能性が高かった。ツール操作の正確性が上がれば、人が結果を一つひとつ確認する負担が減る。
グーグルは、生化学・核関連の悪用やハッキング悪用を防ぐための安全装置を強化して搭載したと明らかにした。性能が高まるほど悪用リスクも増すため、こうした安全装置の水準はモデル選択時の重要な判断材料になっている。
半額の価格は年末まで適用される期間限定条件だ。その後の料金は未定だ。導入時に安さだけを見てサービス構造を組むと、料金が上がった際にコスト計画が揺らぐ可能性がある。性能評価の点数も、グーグルが選んだ項目である点を踏まえる必要がある。実際の業務に合うかどうかは、各自が使って判断すべき問題だ。
AI導入を検討する企業にとっては、今が見極めの時期だ。モデル価格が急速に下がる局面では、特定モデルにサービスを固定するより、モデルを乗り換えられる設計にしておく方が有利だ。