(深層分析)アンソロピック、クロード「Fable 5.1」公開…価格25%値下げで科学研究の成果を発表

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By Global Team

米国のAI企業アンソロピックは1日(現地時間)、新たなAIモデル「Claude Fable 5.1」と「Claude Mythos 5.1」を公開した。両モデルは性能は同じで、安全装置の強さだけが異なる。

Fable 5.1の利用料金は、一般的な作業基準で前モデルより約25%安くなった。複雑な自動化作業では最大45%まで下がる。繰り返し読み込むデータ(キャッシュリード)の費用を75%引き下げた結果だ。

コーディングや知識労働、長時間の問題解決で性能が向上した。科学研究向け試験(TerminalBench-Science)では52.6%を記録し、前モデル(24.7%)の2倍を超えたとアンソピックは説明した。

無害な内容を危険と誤って遮断してしまう「誤検知」も減らした。サイバーセキュリティ分野では、セッション当たりの安全装置介入が平均60%ほど減少した。

新薬候補物質となるタンパク質結合体の設計、金星の地形図作成、ゲノム解析の速度改善など、科学研究での成果も併せて発表した。

Fable 5.1は、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)、グーグル・クラウド、マイクロソフト・アジュールで、すぐに利用できる。

アンソロピックが1日(現地時間)、新たなAIモデル『Claude Fable 5.1』と『Claude Mythos 5.1』を公開した。/アンソロピック提供
アンソロピックが1日(現地時間)、新たなAIモデル『Claude Fable 5.1』と『Claude Mythos 5.1』を公開した。/アンソロピック提供

米国の人工知能(AI)企業アンソロピックが、新たなAIモデル「Claude Fable 5.1」と「Claude Mythos 5.1」を発表した。性能を高める一方で利用料金を下げ、科学研究で得た実験結果まであわせて公開した。アンソロピックは1日の発表で、「コーディングと知識労働で世界最高水準であり、科学の進展にAIがどう貢献するかを事前に示す研究能力を備えている」と説明した。

◆ 同じモデル、異なる安全装置

まず両モデルの関係から確認する必要がある。Fable 5.1とMythos 5.1は、内部を見ると同じモデルだ。違いは安全装置の強さにある。

Fable 5.1は誰でも使える一般向けだ。一方、Mythos 5.1は審査を受けた機関と個人にのみ開放される。サイバーセキュリティと生命科学のように危険が伴う可能性のある分野の専門作業を支援するよう、安全装置を調整した版だ。同じエンジンを、一般道路向けと統制された試験場向けに分けた構造だ。

アンソロピックは、性能向上とともに、これまで顧客から指摘されてきた3点、すなわち価格、データ保管、安全装置の問題も見直したと明らかにした。

◆ 利用料25%、多い場合は45%引き下げ

同じ作業をFable 5とFable 5.1で実行した際の費用比較。一般作業は25%、自動化が多い作業は45%まで下がる。/アンソロピック提供
同じ作業をFable 5とFable 5.1で実行した際の費用比較。一般作業は25%、自動化が多い作業は45%まで下がる。/アンソロピック提供

最も目を引く変化は価格だ。Fable 5.1の利用料は、一般的な作業を基準に前モデルFable 5より約25%安くなった。複雑なコーディングや複数段階を自動で処理する作業では、削減幅が最大45%に達する。

その理由は「キャッシュリード」費用の引き下げにある。慣れない用語だが、原理は単純だ。AIは、ユーザーが入力した文書や会話を細かく分けた「トークン」単位で処理する。長い文書を繰り返し扱うとき、毎回最初から読み直すとコストが大きくなる。

そこで、一度処理した内容を保存して再利用するが、保存済みの内容を再び読み込むのがキャッシュリードだ。アンソロピックはキャッシュリード料金を100万トークンあたり1ドルから0.25ドルへ、75%引き下げた。

反復作業が多いほど節約効果は大きい。文書を何度も参照する自動化作業では、全体費用の大半をキャッシュリードが占めるためだ。ほかの料金は据え置きで、入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルだ。韓国の開発会社やスタートアップがClaudeを活用するなら、同じ作業をより安く回せるようになる。

◆ 性能はどこまで上がったのか

Claude Fable 5.1とFable 5の作業別性能・費用比較。低コストでも前モデルと同等かそれ以上の性能を示す。/アンソロピック提供
Claude Fable 5.1とFable 5の作業別性能・費用比較。低コストでも前モデルと同等かそれ以上の性能を示す。/アンソロピック提供

アンソロピックは複数の試験結果をあわせて示した。ベンチマークとは、モデルの能力を定められた問題で競わせる性能試験だ。数値はアンソロピックの自社測定値である。

科学研究能力を測る「TerminalBench-Science」では、Fable 5.1が52.6%を記録した。前モデルFable 5(24.7%)の2倍を超え、上位モデルだったOpus 5(29.0%)や競合モデルも上回ったという。

コマンドでコーディング作業を処理する「TerminalBench 4.0」では、Fable 5.1が55.8%、安全装置を外したMythos 5.1が60.9%を獲得した。コーディングツールCursorの試験(CursorBench)では73.4%、複数分野の知識を問う「人類最後の試験」では、ツールなしで60.9%、ツールを使うと65.0%だった。

主要性能試験でのFable 5.1、Fable 5、Opus 5、競合モデル(GPT-5.6)の点数比較。/アンソロピック提供
主要性能試験でのFable 5.1、Fable 5、Opus 5、競合モデル(GPT-5.6)の点数比較。/アンソロピック提供

アンソロピックは数値以上に、働き方の変化を強調した。Fable 5.1は、結果だけもっともらしく整える近道を避け、問題の根本原因を探して修正するという。実例も挙げた。投資会社ミレニアムの試験では、Fable 5.1が自社内部システムでまれに発生するエラーの原因を突き止めた。100万回に1回ほど起き、4~5年間、どのエンジニアも、ほかのAIモデルも説明できなかった問題だった。モデルは外部企業が作ったソフトウェアを解析し、エラー記録と照合した末、そのソフトウェアに含まれた欠陥まで指摘した。

先に試した企業からの評価も公開された。金融会社Jane Streetは「コーディング問題を以前のモデルより多く解き、長い作業でも説明を追いやすい」と述べた。開発ツール企業Cognitionは「作業当たりのコストが低く、Opusに任せていたコードレビュー作業をFable 5.1に移す」と明らかにした。

データベース企業MongoDBは「複雑な試作品を3日で作り、何時間も人手なしで自走しながら作業を続けた」と伝えた。フィンテック企業Rampは「38時間にわたり無人で回した作業で、従来の研究結果の誤りを自ら見つけて修正した」とした。

◆ データは顧客サーバーに…「EFS」を導入

企業がAIを使う際、最も神経を使う問題がデータ保管だ。会社の機密がAI企業のサーバーに残らないかという懸念である。アンソロピックは「企業向けフロンティア安全装置(EFS)」という方式を新たに打ち出した。

核心は、データをアンソロピックではなく顧客が管理するクラウドに保存する点にある。人が内容を確認する必要がある場合も、アンソロピックではなく顧客が直接行う。データをまったく残さない「ゼロデータ保持」と同水準の秘匿を維持しつつ、悪用を防ぐ監視機能は生かしたと説明した。

金融・医療・製造・法律など100社を超える企業、そしてアマゾン、グーグル、マイクロソフトのクラウドとともに開発した。今秋から段階的に適用され、準備が整うまで、資格を満たす顧客はデータを残さない条件でFable 5.1を利用できる。

◆ 安全装置、無害な要求は過剰に止めない

AI安全装置の厄介な点は「誤検知」だ。害のない質問を危険な要求だと誤判定して、回答を止めてしまう問題である。たとえば、医療に関する質問や、セキュリティ担当者が自分のシステムを守るための正当な作業まで遮断すると、道具としての実用性が落ちる。

アンソロピックはFable 5.1で誤検知を大幅に減らしたと明らかにした。サイバーセキュリティ分野では、新しい安全装置が以前より誤検知を60%少なくした。Claude Codeユーザー基準では、セッション当たりの安全装置介入が平均60%ほど減った。

Fable 5.1が、ソフトウェアの弱点(脆弱性)を見つけ出す防御作業に使えるようになった影響が大きい。ただし、弱点を突く攻撃ツールを作ることは引き続き阻止する。侵入試験や攻撃コード作成など、両面性のある作業は上位モデルOpusに回す。

生命科学分野も見直した。小学校レベルの生物学や医学の質問では、安全装置が作動する頻度を85%下げた。一方で、実際の研究開発に関わる質問は、引き続き上位モデルに回す。その代わり、米政府と協力して検証済みの生命科学専門家にMythos 5.1の高度な生物学機能を開放するアクセスプログラムを設けた。

◆ AIが科学を助ける…3つの実験

今回の発表でアンソロピックが特に強調したのは、科学研究での成果だった。3つの事例を公開した。

1つ目は、新薬開発に直結する分子設計だ。多くの薬は、体内の標的に結合して効果を発揮する。標的に強く結合する物質(バインダー)を設計することが、新薬開発の第一段階となる。

Mythos 5.1は公開済みのタンパク質設計ツールを活用して結合体を設計し、外部機関2カ所が実験で検証した。結果は注目に値した。標的3つで結合力が関連コンテストの最高記録の10倍に達し、標的12個にわたって成功率が50%近くに達した。通常、この分野の成功率は10~15%程度だ。

Claudeが設計したタンパク質結合体(オレンジ色)が12の標的(灰色)に結合した様子。すべての設計で実験室における結合が確認された。/アンソロピック提供
Claudeが設計したタンパク質結合体(オレンジ色)が12の標的(灰色)に結合した様子。すべての設計で実験室における結合が確認された。/アンソロピック提供

2つ目は金星の地形図だ。Fable 5.1はニューラルネットワークを訓練し、金星の3分の1にあたる新たな高解像度地形図を作成した。30年以上前に米航空宇宙局(NASA)のマゼラン探査機が撮影したレーダー画像を基にしている。

新しい地図は、従来10~20km程度だった解像度を2~3kmに高め、高さ情報の精度も最大25%向上させた。アンソロピックは、今後予定されるNASAと欧州宇宙機関(ESA)の金星探査に役立つことを期待し、地図を公開ライセンスで提供した。

Claudeが新たに作成した金星地形図。従来のマゼラン探査機のレーダー資料(左)より解像度を大きく高め、15km規模の火山地形まで精密に示す。/アンソロピック提供
Claudeが新たに作成した金星地形図。従来のマゼラン探査機のレーダー資料(左)より解像度を大きく高め、15km規模の火山地形まで精密に示す。/アンソロピック提供

3つ目は計算生物学だ。生物学研究では、グラフィックス処理装置(GPU)上で動くAIモデルを何千回も回す。速度がそのまま研究の進み具合を左右する。Mythos 5.1はGPU上で動くプログラムを直接修正し、公開済みのディープラーニングモデル7種の速度を最大2.5倍向上させた。

成果はそのままで、速度だけを上げた形だ。全ゲノム解析の作業ではGPUコストを30~60%削減した。性能担当エンジニア数人が数週間かかる作業を、数日で終えたという。

NVIDIA H100で測定した7種類のディープラーニングモデルの速度向上幅。最大2.5倍高速化した。/アンソロピック提供
NVIDIA H100で測定した7種類のディープラーニングモデルの速度向上幅。最大2.5倍高速化した。/アンソロピック提供

◆ 安全性検証とEU規制への対応

アンソロピックは、公開に先立ち危険性の検証を行ったと明らかにした。化学・生物兵器の製造に悪用されうるか、サイバー攻撃能力はどの程度かなどを、自社評価と外部検証で確認した。Mythos 5.1の生物学能力は以前より高まったが、会社が定める危険基準の次段階には達しておらず、従来と同じ安全装置を適用して配布すると説明した。

欧州連合(EU)のAI規制にも対応した。アンソロピックは7月、ほかの190機関とともに「EU AI法」のコンテンツ表示規約に署名した。8月2日以降に出たモデルの出力には、目に見えない印(ウォーターマーク)が入る。Claudeが文章作成に関与した可能性を判別するための仕組みだ。ユーザーや会話内容に関する情報は含まず、専用の判別ツールがなければ確認できない。

◆ 今日から利用可能

Fable 5.1は発表当日から、AWS、グーグル・クラウド、マイクロソフト・アジュールなど主要プラットフォームすべてで利用できる。開発者はClaude APIで「claude-fable-5-1」として使える。

Mythos 5.1は、認証済みのサイバー防御要員と生命科学専門家にのみ開放され、現時点では米国内の一部機関に限定される。アンソロピックは米政府と協議し、対象を国内外へ広げる計画だと明らかにした。

価格を下げながら性能を高め、科学研究の成果まで前面に押し出した今回の発表は、AIモデル競争が単純な性能争いを超え、コストと安全性、実際の有用性へ移っていることを示している。特に、新薬設計とゲノム解析のような科学領域での成果は、AIが研究室の道具として定着する流れを加速させるかを占う指標として残った。