米国が自国のAI企業アンソロピックの最新モデルを外国人全体に対して遮断したことで、最も近い同盟国が「われわれは例外にしてほしい」と米国に声を上げている。
先頭に立っているのは英国とカナダだ。敵対国でもない同盟国まで一括で縛った今回の措置は、世界が米国のAIにいかに深く依存しているかを一瞬で浮き彫りにした。
アンソロピックは、チャットボット「Claude」を開発する米サンフランシスコのAI企業だ。米政府は12日、新型モデル「フェーブル5」と「ミトス5」を外国籍者が使えないようにした。
国籍を基準に一部だけを選別するのは難しいと判断した同社は、13日からこの2モデルを世界中のすべての顧客向けに停止した。米国が大規模言語モデル、すなわちChatGPTのような対話型AIのアクセスを輸出規制で封じたのは今回が初めてだ。
問題は、遮断対象に英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドといった主要同盟国まで含まれていた点だ。これらの国の国民は、米国に住んでいても自国にいても関係なく利用できなくなった。同盟国が自国への例外適用を求め始めた背景だ。カナダは米国と水面下で調整に入っており、英国と欧州も不満を公に示している。
◆ 人より速く弱点を見つけるAI… フェーブル5の二つの顔
米国が自国企業のAIを、しかも同盟国にまで禁じた理由は、Claudeが持つ能力にある。
ミトス5はアンソロピックが保有する最も強力なモデルだ。このAIの得意分野の一つは、コンピューターシステムの弱点、すなわち「セキュリティ脆弱性」を見つけ出すことだ。脆弱性とは、ハッカーが入り込めるプログラム上の穴を指す。ミトス5は、人間のセキュリティ専門家よりも速く、正確にこの穴を見つけると評価されている。
ここには二つの顔がある。防御側が使えば、システムの穴を事前に塞ぐ強力な盾になる。しかし攻撃側の手に渡れば、他人のシステムを突破する自動ハッキングツールへと変わる。同じ刃でも、手術用メスにも凶器にもなるのと同じだ。米国が恐れたのは、この刃が敵対国や犯罪組織の手に渡る事態だった。
フェーブル5は、このミトス5を一般向けに公開したモデルだ。ただし危険な分野の回答を遮る安全装置を幾重にも施している。アンソロピックは公開前に米政府、英国のAI安全研究所、外部機関とともに数千時間かけてこの安全装置を検証し、一度にすべてを破る万能の回避策は見つからなかったと明らかにした。
火種はその安全装置から生まれた。アマゾンの研究チームがフェーブル5の防御壁を一部回避する方法を見つけたのだ。AIに特定プログラムのコードを読ませたうえで「不具合を直してみろ」と指示する形で、封じていたセキュリティ機能の一部を引き出したという。この内容はホワイトハウスに報告され、トランプ大統領が直接輸出規制を指示したと伝えられている。
アンソロピックは強く反論している。問題の回避策は特定の状況でのみ通用する狭い欠陥にすぎず、すべての安全装置を崩壊させるほどではない。その程度の能力は、オープンAIのGPT-5.5など、すでに公開されている他のモデルでも同様に見られるという。
数億人が使う商用AIを、狭い抜け穴一つを理由に丸ごと回収するのは行き過ぎだという立場だ。同社は社員をワシントンに送り、規制を解除するよう説得を続けている。
◆ 英国・カナダが「例外」を求める理由
同盟国が免除を求めるのには理由がある。何より、彼らはすでにこのAIを使っていた。
多くの同盟国はミトスを、自国の重要施設のセキュリティ脆弱性を点検するために活用してきた。盾として使っていた道具がある日突然消えれば、直ちにセキュリティ点検に穴が空く。危険を防ぐための措置が、かえって危険を高めるという逆説が生じるわけだ。
突然だったことも耐え難い。米政府の指示一枚でモデルは一夜にして止まった。このAIに業務を任せていた企業や機関には、備える時間すらなかった。中核ツールが通知一つで停止し得るという事実そのものが、同盟国にとって受け入れ難いリスクとして映っている。
同盟国という立場もかかっている。英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドは、米国と情報を共有する「ファイブアイズ」の一員だ。最も近い友邦が敵対国と同じように一律遮断されたのだから、不満が大きいのは当然だ。トランプ政権の元AI顧問でさえ、「先端半導体の中国向け輸出は緩める一方、同盟国のAIアクセスは一括で止めるのは筋が通らない」と批判した。
カナダは直ちに米国との接触に乗り出した。カーニー首相は「カナダと米国の間では情報交換が円滑に行われている」としたうえで、「米国が特定したリスクを真剣に受け止めるのは理解できる」と述べた。
危険性は認めつつも、同盟国向けには別途例外を設けるべきだというシグナルだ。英国や欧州の指導者たちも依存の危険性を公に語り、圧力を強めている。同盟国が狙うのは、「友邦は信頼できる利用者だ」と訴え、自国だけは遮断の対象から外してもらうことだ。
◆ スイッチ一つで止まるAI… 主権論争の本質
今回の問題が投げかけたより大きな問いは、免除の可否を超えたところにある。ある国の判断一つで、世界が使っていたAIが同時に止まり得るという事実だ。
カーニー首相はこれを2008年の金融危機になぞらえた。巨大銀行数社が相互に絡み合い、一つが崩れると世界の金融全体が揺らいだように、少数のAIに皆が依存すれば、その一つが止まる時に全体が揺らぐというわけだ。「選択肢が一つしかないのは、決して良い考えではない」という彼の言葉は、この文脈で出てきた。
本質はコントロール権だ。最先端AIを米国企業が開発し、その企業が米政府の命令に従わざるを得ないなら、そのAIに日常、産業、安全保障を委ねた国々は、結局米国の決定に運命を預けることになる。
フランスのある有力政治家は、「技術を他国に依存する国は、一夜で電源を切られ得る国だ」と語った。今回は輸出規制という形だったが、次は企業買収や値上げ、サービス終了といった別の形で現れるかもしれない。
各国はすでに動いている。EUは今月初め、米国クラウドへの依存を減らす技術主権政策のパッケージを打ち出した。カナダはアイルランドとAI協力協定を結び、米国以外のパートナーを広げている。AIを電力や通信のように止めてはならない基盤インフラとみなし、その基盤をどこに置くかを改めて問い始めたのだ。
◆ 韓国にも迫る課題… 「ソブリンAI」と多角化
韓国もこの構図の例外ではない。むしろ中心にいる。国内企業や公共機関の多くが、業務に米国製AIを取り入れている。顧客対応、文書作成、コード開発、データ分析まで、米国モデルに頼る領域は急速に広がった。米国の政策一つで、これらのツールが止まり得ることが今回、目の前で確認された。
備えの方向性はいくつか議論されている。一つは、自国で制御できるAI、いわゆる「ソブリンAI」を整えることだ。国産の大規模言語モデルを育て、機微なデータや中核業務ほど国内で動くモデルで処理しようという流れだ。政府と企業が力を合わせてきた国産AI開発が、いっそう切実になった理由でもある。
特定モデルへの集中を避ける「多角化」も代案に挙がる。一つの企業のAIだけに依存せず、複数の供給者を併用して、一方が止まっても他方へ即座に切り替えられるようにしておこうという考えだ。中核システムほど外部サーバーではなく、自前の設備にAIを直接設置し、外部の遮断命令に左右されないようにする方式も併せて論じられている。
ただ、計算は簡単ではない。最先端AIは依然として米国企業が握っており、国産モデルが短期でその性能に追いつくのは容易ではない。自立を追えば性能で遅れ、性能を追えば依存が深まるというジレンマがある。性能、安全、自立のうち何を優先するかが、政策課題として残っている。
明らかになったのは一つだ。AI主権は、もはや遠い未来の懸念ではなく、今まさに迫るリスクだということだ。同盟国が例外を求めて米国と綱引きを続ける一方で、韓国も同じ問いの前に立たされている。